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ポスト・ピークオイル社会のクルマのかたち

 ホンダが発売したハイブリッド車「インサイト」が予想を上回る人気で、トヨタもプリウスの新型車が5月に発売されるのを機に、現行モデルを大幅値下げすることを決めるなど、急遽ハイブリッド車が注目を集めているが、今年は日本にとって「電気自動車元年」でもあることも忘れてはならない。三菱自動車が、初の量産型i-MiEVを発売する予定なのだ。f0030644_2048239.jpg同社は東京電力と共同で充電インフラを開発しており、埼玉県越谷市のイオンレイクタウンなどに設置され始めている(写真。右側の黄色い方は電動バイク用充電スタンド)。

 i-MiEVのサイトを見ると、「三菱自動車が選んだ未来です」とある。このコピーはなかなか意味深長だ。いまクルマはほぼ100%化石燃料で走っている。その化石燃料(石油)の枯渇とそれに伴う価格高騰によって、自動車業界はクルマという乗り物根本に関わる解決策を突きつけられている。もちろん、地球温暖化や大気汚染の問題もある。その答えの一つが電気自動車だ。三菱自動車以外にも、スバル、日産などが電気自動車に取り組み、コンセプトカーを発表している。

 今回の電気自動車は「第3次」と言われる。第1次は70年代。オイルショックの前後で、きっかけは1970年に改訂された大気浄化法(通称マスキー法)。第2次は90年代でカリフォルニア州のZEV(ゼロエミッションビークル)規制への対応のため。日本ではこのころ京都会議をきっかけにクリーンエネルギー自動車という用語が普及し、こちらも後押しした。しかし、電気自動車は普及しないままに終わった。最大の原因はバッテリーである。バッテリー容量が小さく、航続距離が短いし、充電に長い時間がかかるので、なんとも使い勝手が悪い。

 何しろガソリンはエネルギー密度が大きい。ガソリンを満タンにすれば、燃費のよい小型車ならば500km以上走ることになる。一方、高性能リチウムイオン電池を積んだミニ電気自動車でも、実走でせいぜい100kmも走ればいいところで、まだ鉛バッテリー主流だったころは、環境アピールには使えても実用性に乏しかった。

 逆に言えば、ガソリンのエネルギー密度の大きさが、世界不況に陥っても身動きのとれないビッグ3のような存在を生んだと言うこともできる。ガソリンや軽油はそれだけ“イージーな”エネルギーだからである。

 しかし、「イージーオイルの時代は終わった」と言われる今、クルマはガソリンや軽油に頼らない未来を模索しなければならない。方向は大きく分けると3つある。まず現行の車の燃費を高めていくこと。エンジンの性能、トランスミッションの改良、軽量化……。しかし重装備化が進む現在のクルマにとっては、燃費を1km伸ばすこともなかなか容易ではないし、いずれ限界に突き当たる。ハイブリッド社(HVまたはHEV)はその延長にあり、減速時のエネルギーを回生するとともに、そのエネルギーを加速時に使う(アシストする)ことによって燃費を高めている。トップメーカーのトヨタは、いずれほとんどの車種にハイブリッド車をラインナップするという。

 燃料の多様化はこのサブカテゴリーだ。ガソリン、軽油から、いわゆるバイオ燃料への代替である。ただこれが解決にならないことはすでに白日のものとなっている。現状のような車のままでは、せいぜい数%が代替できるかどうかというところだろうが、車側はいずれにせよバイオ燃料への対応を進め、“デュアル・フューエル”あるいは“マルチ・フューエル”化するだろう。

 2010年代の中ごろまでは、こうした方向に進むだろう。その先にプラグイン・ハイブリッド(PHEV)がある。これは電気とガソリン・軽油(またはバイオ燃料)を併用するが、むしろ電気が主であり、高速走行時や長距離を走る際に液体燃料でアシストする。

f0030644_20541077.jpg このプラグイン・ハイブリッドまで技術的に対応できるのは、国内では2社程度と見ている(写真は走行試験中のプラグイン・プリウス)。ヨーロッパでも2~3社、アメリカではもしかすると1社もないかもしれない。GMには可能性があったが会社そのものの存立が危うく、開発資金が手当てできそうにない。貧すれば何とやらである。

 2つ目の方向が燃料電池自動車(FCEV)で、これは詳しく書かないがいずれ挫折するはずだ。よほど技術的ブレークスルーがない限り、エクセルギー的に成り立たない。

 そして3つ目が電気自動車である。いや究極は全て電気自動車になると、経産省などでは考えているフシがある。PHEVもFCEVも実は電気自動車であり、電気自動車の技術向上によって、ここに収斂していくという見方である。しかし、先ほど言ったようにバッテリーの問題がある。充電時間も含め、これ以上バッテリーを高性能にすることも難しそうだ。

 しかし、すでに海外では一足早く電気自動車の時代(第3次ブーム)はスタートしている。カリフォルニアの電気自動車ベンチャー、テスラ・モータースがテスラ・ロードスターを市販し始めているし、ノルウェイのシンク(THINK)もコンパクトなシンク・シティを販売している。

 充電時間の問題も、08年12月10日の当ブログで紹介したベタープレイス社のビジネスモデルのように、バッテリーそのものを交換してしまうことで解決できる。このアイデアは日本にもあったが、実用化では先を越されそうだ。複数のバッテリーメーカーがひしめき、自動車会社と提携を結んでいる日本では難しいかもしれないが、小型電池のような規格化ができれば、この方式はすぐにでも普及するだろう。ガソリンスタンドも電気スタンドに模様替えして生き残れる。

 ただ航続距離が短いという電気自動車の限界は当分(永久にかもしれない)解決しないだろう。それであれば航続距離の短い乗り物として使い、長距離の移動は別の手段にまかせるという考えもある。それほど高性能な電気自動車でなくてもいい。もっと簡便で安価な乗り物が出てくる必要がある。インド、タタモータースの20万円カー「ナノ」の電気自動車版が、新興国から発売される日も遠くないかもしれない。

 個人がクルマを所有するというスタイルから、必要なときに必要な形で“移動というサービス”を提供するシステム(ビジネス)構築も望まれる。町の構造やライフスタイルも含めて、クルマ社会からどう脱却するか、ポスト・ピークオイル社会に向けたビジョンが必要だろう。
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by greenerworld | 2009-03-25 20:51 | エネルギー  

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