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迷走する日本の環境エネルギー政策

 この春、2010年から住宅用太陽光発電電力の固定買取制度を始めるという、大きな政策転換があった。自家消費分を除き、売電分のみという変則的なものとはいえ、これまで電力会社のボランタリーな取り組みであったところから、設置者に有利な価格での買取が法的に位置づけられる。何しろ現行の制度は「余剰電力買取制度」である。あくまで需用者が自ら好んで設置した自家発電装置から、余っている分だけを買い取る、というものである。別に買わなくてもいい(ホンネは買いたくない)んだけど、社会貢献として協力しますよという制度なのだ。90年代後半から2000年代半ばにかけ、補助金によって日本の住宅用太陽光発電設置が伸び、世界トップの設置出力・製造となったのも、実はこうしたあいまいな制度に支えられていたのであった。

 その後ドイツが風力に続いて太陽光発電でも世界のトップに躍り出て、さらにスペインも急激に設置を伸ばした。いずれも固定買取制度が功を奏した。にもかかわらず日本では、補助金を年々減らし、2005年を最後にその補助金すら廃止した。とたんに国内市場はしぼんでしまった。日本の太陽電池メーカーのシェアも年々低下している。

 焦った政府は、福田ビジョンで太陽光世界一奪還を掲げ、2009年度予算に補助金復活を計上、さらに2008年度の補正予算で前倒し実施した。しかし約2年の間、補助金が支給されず(復活などないと考えられていたから)やむなく自費のみで設置したユーザーはこれでは救われない。そもそもkWあたり7万円の補助金ではとても元が取れない、3〜5年後に設置金額を半額にするという目標を掲げていたら、今補助金を支給しても買い控えが起こる、などと政策矛盾を指摘されてきた。

 こうした批判に答える形で出てきたのが、先の住宅用太陽光発電(余剰電力)固定買取制度だった(とブログ子は考えている)。しかし、なぜ売電だけなのか。その答えは、日本が先に政策として導入したRPS制度とグリーン電力証書制度にある。電力会社(大口の電力ユーザーの場合も)一定の再生可能電力導入枠を課し、それを達成できなければ市場でその分の証書を購入しなければならないというテクニカルな制度だ。ヨーロッパではすでに効果のない制度として評価が固まっている。「日本でも固定買取制度を」という市民に背中を押された超党派の議員連盟の声に反して、経産省はRPS制度を導入した、しかもその枠たるや2010年で全電力量の1.35%、2014年で1.6%という低い目標に過ぎない。しかもそのほとんどは「バイオマス発電」という名のゴミ発電で埋まってしまっている。

 そもそも、太陽光発電の余剰電力を固定価格で買い取ることを提案した3月27日付報告書「『太陽光発電の新たな買取制度』について」(総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会)では、固定買取制度について海外での一定の効果を認めながらも、「電気料金の恒常的な値上げ要因につながり(中略)、コスト削減インセンティブが働きにくい側面がある」と批判している。

 同報告では、日本のこれまでの取り組みを次の3つに整理する。1)電力事業者へのRPS義務付け、2)補助制度・税制支援制度、3)関係者の自主的な取り組み。これらは事実である。余剰電力買取や民間のグリーン電力証書は3)にあたる。問題は、一言すれば、これらが入り乱れて、あいまいで訳のわからない状況になっていることだ。あえていえば、鵺(ぬえ)のような制度である。

f0030644_1245737.jpg たとえば、日本の場合、RPSにおける過不足をやりとりするグリーン電力証書市場がなかった。しかもこれとは別に、日本自然エネルギー(株)などが手掛ける、自主的な取り組みとしてのグリーン電力証書のしくみがある(企業の社会貢献としてグリーン電力を使う、右写真参照)。東京都では今年度から始める太陽光発電や太陽熱利用の補助制度で、補助を受けた設置者から再生可能エネルギーの持つ「環境価値」を買い取るグリーンエネルギー証書システムを始める。環境省も地域におけるグリーン証書システム構築のモデル事業を実施する。東京都や環境省が対象とする「環境価値」は、住宅用の自家消費分だ。売電した余剰電力分の環境価値は、電力会社に売り渡してしまっていると考えるからである。これらは本来のRPS制度が併用しているグリーン証書制度とは異なるしくみである。RPS制度におけるグリーン証書は、あくまで義務を課されている事業者同士で、過不足を取引するのである。日本のグリーン電力証書は、そこから遠く離れ、テクニカルなややこしい制度になってしまった。

 こうした状況の一方で、福田ビジョンが「太陽光発電世界一奪還、導入量を2020年に10倍・2030年に40倍、3〜5年後に半額」を打ち出してしまった。

 この達成はもはやこれまでの枠組では無理である。しかし、行政の「無謬性」は死守しなければならない。住宅用太陽光電力の余剰電力固定買取は、こうした次から次へと生じる破れ目を糊塗した結果ではないか。低いRPSを維持するためには、よりコスト競争力のある風力発電などは固定買取で優遇できない(事実RPSと住宅用太陽光発電固定買取の二本立てで、風力発電や小水力発電がしぼんでしまうと心配する研究者は少なくない)。グリーン電力証書制度(これも民間の自主的取り組とは別に、)を今さらやめろとは言えないので、その利用余地を残すために自家消費分は買取対象外とする。風力や小水力もRPSとは別枠で、グリーン電力証書で支援しようね……。迷走を重ね、どんどん複雑怪奇な制度になっていく。

 これはもういったんご破算にして(つまり失敗を認めて)、すっきりとした制度で出直すしかあるまい。再生可能電力は自家消費分も含めて全て、元が取れる価格で、電力会社に買取を義務付ける、固定買取制度一本にすれば済む。同じ電力を、自家消費分と余剰分に分けたり、電力部分と環境価値部分に分けたりという不自然なことをする必要はない。電力料金が上昇するというならば、いま補助金や複雑な制度維持のために使っている予算で補えばいいじゃないか。

 そんなことを考えていたら、斎藤環境大臣が太陽光以外にも固定買取制を導入すべきと発言したという記事があった。ほころびはいよいよ繕えないほど大きくなったか。
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by greenerworld | 2009-04-26 12:36 | 環境エネルギー政策  

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