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ミツバチだけじゃない

 農薬の影響かウィルスか、日本でも養蜂セイヨウミツバチが減っており、果樹の受粉に影響が出ているという。アメリカに端を発したCCD(蜂群崩壊異常)がいよいよ日本でも、と心配されているようだ。事の本質は生態系全体の劣化にあるのだが、そのことにふれているメディアはブログ子の知る限りない。

 CCDの原因は複合的な要因とされているが、長く「家畜」として育てられてきたセイヨウミツバチの脆弱さがその背景にあると考えている。セイヨウミツバチは数千年前から中東やヨーロッパで飼育されてきた歴史があり、その間に飼いやすく蜜を多く貯める系統が選び出されたと思われる。アメリカにもたらされたのも、その「家畜ミツバチ」である。しかもアメリカのミツバチは移民時代に運ばれた少数の群れから増えたもので、遺伝的な変異はさらに小さいはずである。こうしたことから元々病気や外敵、環境変化に弱いと考えられる。一方アメリカの作物もヨーロッパや中央アジア起源のものが多く、小麦など穀類を除いては、実をつけ種子を結ぶために花粉を運んでくれる送粉者(ポリネーター)を必要とする。そのパートナーこそ同じユーラシア起源のセイヨウミツバチである。日本でも果樹にはリンゴやサクランボなどヨーロッパや中央アジア原産のものが多く、この受粉にはミツバチが必要だ(ただし在来種のニホンミツバチでも可)。ブロッコリーなどの野菜類も種をつけるためにミツバチの助けを必要とする。でなければ、翌年蒔く種をつけてくれなくなり、栽培が継続できない。

 ミツバチは、ハナバチ(花蜂)類という大きなグループの一員である。ハナバチはクマバチやマルハナバチなど、花粉と蜜に依存しながら暮らすハチの仲間である。彼らは餌を集める過程で(図らずも)植物の授粉を行っている。もちろん受粉を助けるのはチョウやハナアブなど、ハナバチ以外にもある。花(植物)とポリネーターの関係は共進化という現象で結ばれ、花はポリネーターを誘うために、またポリネーターは効率よく花粉や蜜を集めるために、さまざまな形態・機能上の進化を遂げ、特殊化してきた。

 果樹や野菜に限らず、陸上の多くの植物は、種の存続にポリネーターを必要とする。またポリネーターも植物(花)の提供する花粉や蜜に依存している。持ちつ持たれつの関係はどちらかがいなくなったときに、相手も存続できなくなることを意味する。開発で植物が失われるとポリネーターが滅び、ポリネーターが農薬の影響で死滅すると、いずれ植物も消えていく運命にある。

f0030644_827551.jpg ポリネーターが世界各地で減少しているという報告が気になる。負のスパイラルを転げ落ち始めているのではないか。ミツバチの減少は、果樹や野菜の受粉という人間にとっての直接の利害に関わる。しかし、ポリネーター全体の減少は、間接的にじわじわと私たちの未来を狭めていく。ハチの羽音が聞こえなくなったとき、それは生態系の崩壊の始まりなのかもしれないのだ。
(写真はツリフネソウの花に潜り込んで花粉と蜜を集めるトラマルハナバチ)
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by greenerworld | 2009-04-30 08:32 | 生物多様性  

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