管理者へのメール / 管理者のプロフィール


灯りを灯すたびに……

f0030644_1643575.jpg

 以前、関東地方のある離島で、「漆黒の闇」を経験したことがある。月がないどころか、厚い雲に覆われて星明かりすらなく、前後左右も上下もわからない、いわゆる鼻をつままれてもわからないという暗さだ。そんな闇の中、オオミズナギドリが巣に戻ってくる、その時の音や声を聴こうという趣向だったと思う。移動の時リーダーだけは小さな懐中電灯を点けていたが、参加者はその後をはぐれないように手をつないで歩いた。視覚に頼れないことを体が納得すると、それ以外の感覚がだんだんととぎすまされてくる。聴覚はもちろんだが、とくに敏感になるのは嗅覚や触覚だ。空気の中にさまざまな匂いが混じっていることがわかる。皮膚は気温や湿度、わずかな空気の動きを感じ取る。ほ乳類は中生代の闇の中で生き延びてきた。その原初的な体験がよみがえってくるような思いだった。

 九州の離島では、海岸に寝そべって星を眺めた。薄もやのように光る天の川を基準に、アルタイルやベガ、デネブを探す。南の空にはさそり座が長く横たわり、時折流星が視界をかすめた。波音をBGMに星だけを眺めていると、まるで宇宙空間に漂っているような感覚さえした。

 また別の時、沖縄の離島で、満月の夜、サンゴのかけらを敷き詰めた小道を歩いた。白い小道にくっきりと人の影が映る。海岸に出るとリーフの波頭が輝いて見えた。砂浜に車座に座って見渡せば人の表情がはっきりとわかった。満月の光はどこかあやしげでもある。浮かれ狸が踊り出したり、人狼が変身したりするのもうべなるかな。人もまた然りだ。三線の響きで島歌が始まった。

 東(あーり)から ありゆる うつきのゆ うちなん やいまん てらしょうり
(東の空から上ってくる大きな月の夜 (お月様よ)沖縄も八重山も照らしておくれ)

 灯りを一本一本灯すたびに、人はどれほどのものを失っただろうか。
(写真はNASA Image Gallaryより。クリックすると拡大します。これはこれで興味深い写真ですが……)
[PR]

by greenerworld | 2009-07-30 16:53 | 森羅万象  

<< 一筋縄ではいかない太陽光電力全... i-MiEVよりプリウスの方が... >>