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温暖化スキャンダル

 科学者、研究者といえども、もちろん生身の人間である。研究が続けられるのは、その研究が世の中に認められ、研究費がつくことが前提である。お金の出所のお眼鏡に適わなければ研究はできないし、その前に食べていけない。純粋な科学研究というのはなかなか難しいものだ。しかも一般人にはその研究内容や真偽、意味さえわからないことが多い。しかし、地球環境問題と言えば、センセーショナルだ。この分野は公害、オゾンホールなど、時に利害の相反する大資本や国家権力からの迫害を受けてきた歴史もある。気候変動も初めのうちはそうだった。だからこそ、多くの科学者、研究者がコツコツとデータを積み上げ、議論を重ねてきたのだった。それがIPCC(気候変動に関わる政府間パネル)の手法だった。だから、われら一般人もその報告に信頼を寄せてきた。報告書にはビジュアル化された多くの“証拠”が示されていた。細かいことはわからなくとも、その図やグラフを見れば、温暖化の進行とその影響は深刻だと誰もが思う。

 そのIPCCのデータの一部にでっち上げ、または過大な評価が含まれていることが報道され始めた。時期はコペンハーゲン会議の開かれた昨年末あたりから。きっかけは、英国イーストアングリア大学の気候研究チームのメールがハッキングによって盗み出され、暴露されたことだ。メールには、平均気温低下を示す気象データを意図的に隠したという内容が記されていたとされる。過去千年間の気温推移の中で近年の急速な気温上昇を示す有名なグラフが、実は都合のよいデータだけからつくられたものではないかという疑惑も生じている。さらに今年に入って、「ヒマラヤの氷河が2035年までに消失する可能性が非常に高い」というIPCCの第4次報告書記述に、科学的な根拠がなかったことが明らかにされた。

 懐疑論者たちは俄然勢いづいている。しょせん、科学は政治やカネと無縁ではいられない。温暖化の元兇の一つと非難された石油メジャーのエクソンモービルが、温暖化の反証研究に資金を提供したこともあった。今回の暴露も、時期的に見て政治的な意図が感じられる。都合の悪いデータは反故にするか評価を低くする、逆に都合のよいデータはことさら大きく取り上げる。それは温暖化肯定派でも懐疑派でも、どちらの側にもあり得ることだ。マスコミにも詳細は理解できないから、スキャンダルめいた話だけが大きく取り上げられる。その結果真実(温暖化が起きているのかどうか、起こっているとすればその原因は何か)は遠くなる。

 IPCCは組織が大きくなり、検証すべきデータやそのプロセスは膨大かつ複雑になった。だが、そこで検証されるデータはしょせん二次情報・三次情報に過ぎない。さらに気象データ一つとっても、その測定値はみなが民主的な国にだけあるわけではない。シミュレーションに加えるべきファクターも十分ではない。もともとIPCC報告書がすべてを語っているわけではないのだ。

 結局はその限界を了解しつつ、懐疑派も加えて検証プロセスを透明化するしかないが、巨大になったIPCCだけでなく、世界はすでに「人為起源の温暖化が進行している」というフレームワークの元に動いている。そこに多くの人材や予算が投入され、法律も整備されている。“気候変動市場”も年々拡大している。もしそれが虚構に過ぎなかったとしたらすべてがひっくり返る。一国の政権交代どころの騒ぎではないだろう。

 パチャウリIPCC議長の関係団体が、気候変動ビジネスに関わる企業から資金を提供されているという“スキャンダル”も報道された。肯定派対懐疑派の論争や暴露合戦の裏では、それぞれを後押しするカネが動いているのかも知れない。
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by greenerworld | 2010-02-04 08:31 | 気候変動  

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