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マグロのトロ、好きですか?

 「江戸前」というのは、文字通り江戸のすぐ前の海で、そこでとれた魚介類を寿司ネタにしたものを江戸前寿司と言う。東京湾の内海は浅い砂地で干潟が広がり、アナゴ、コハダ、ヒラメ、カレイ、アジ、シャコ、クルマエビ、タコ、アサリ、ハマグリ、バカガイ、それにアサクサノリといったところが江戸前の海の幸の代表であった。ネタはたいてい酢で締めるか、煮て使った。もともと握り寿司は立ち食いのファーストフードだったようで、小さな屋台で食べさせたのが始まりと聞く。その意味では、回転寿司はその伝統の延長にあるわけですな。

 ところで、江戸前の寿司にマグロは欠かせないと思っている人は多いだろう。しかし、マグロは外洋を泳ぐ回遊魚で、江戸前の浅い海ではとれないのだ。日本人がマグロを食べ始めたのは有史以前だが、これほどの量を消費するようになったのはごくごく近年である。1960年代までは国内で漁獲されたマグロの多くが缶詰などにして輸出されていたのだ。ブログ子はトロが苦手で、あんなべったりした脂身をなぜありがたがる人がいるのか理解に苦しむが、そのトロもかつては猫またぎであったと聞く。牛の霜降りもそうだが、生活水準が上がると「脂」が食べたくなるのでしょうか。でも、少なくとも生で食べるものではないな。ともあれ、いまでは世界のクロマグロ(タイセイヨウ+本マグロ)の8割、ミナミマグロのほぼ全量が、日本で消費されているのだそうである。そのうちのタイセイヨウクロマグロが、乱獲により絶滅のおそれがあり、カタールで開催されているワシントン条約の会議(COP15)で、モナコが全面禁輸を提案した。

 ワシントン条約は正式には「絶滅のおそれのある野生動植物種の国際取引に関する条約(CITES)」といい、有名なところではパンダやトラやアジアアロワナなどが附属書に記載され、規制の対象になっているが、国際取引のみを規制していて、種そのものを保全するものではない。附属書はⅠ(全面禁輸、ただし学術研究目的を除く)、Ⅱ(輸出国の輸出許可書が必要)、Ⅲ(輸出国の輸出許可書または原産地証明が必要)という三段階になっている。モナコ案はこのうち最も規制の厳しい附属書Ⅰにタイセイヨウクロマグロを記載しようという提案。ただし取引の規制なので、タイセイヨウクロマグロの漁獲が禁止されるわけではない。しかし、現実にはタイセイヨウクロマグロのほとんどは日本に輸出されているので、日本と日本に輸出することで成り立っている現地のマグロ漁業者や畜養業者には大打撃になる。

 18日の委員会ではモナコ案が否決され、全面禁輸は免れることになった。しかし、この議論はここ数年ずっと続いており、これで一件落着とは行かない。資源の現状認識については、規制に反対する日本と規制推進の国で異なる。日本はまだ絶滅が心配されるような状況ではないという立場だ。このままいくとクジラと同じような状況になりそうだ(実際、日本が調査捕鯨で捕獲しているミンククジラは附属書Ⅰにリストアップされている)。シーシェパードは次はマグロだといっているようだし……。ただ、マグロ類全体では圧倒的にキハダやメバチが多い。こちらはまだしっかりと管理すれば、資源は持続的に使えそうだ。

 「マグロ信仰」はおそらく日本人にとって、ごくごく新しいものだと思われる。自然の恵みを将来の子孫にも楽しんでもらえるよう、1回考え直してみる必要がありませんかね?
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by greenerworld | 2010-03-19 09:32 | 生物多様性  

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