管理者へのメール / 管理者のプロフィール


戦争画

f0030644_17165731.jpg ピカソのゲルニカ、丸木夫妻の原爆の図を持ち出すまでもなく、戦争の悲惨さ愚かしさを伝えようとした芸術家は大勢いる。一方で、プロパガンダとしての「戦争画」もまた描かれた。著名な画家の中にも戦争画を描き、戦争に協力した人たちがいたのだ。

 時間つぶしに入った古書店でたまたま目にした『南方画信』という冊子。昭和17年12月の発行で、発行所は陸軍美術協会出版部とある。これは第二輯(集)で、第一輯は同年9月に発行されたらしい。向井潤吉、藤田嗣治、川端龍子、小磯良平、山口蓬春ら、錚々たる画壇の立役者たちが、前線を訪れ、戦果をもてはやし、国民を鼓舞する絵と文を寄せている。

 巻頭に陸軍省報道部員で陸軍少佐の平櫛孝なる人物が、「戦時下美術家への要望」と題する文を寄せている。要するに、戦時下においては臣民それぞれがそれぞれの役割を果たし、総力を挙げて戦うべしというのである。そして「戦時下の今日、美術は飽くまでも『役に立つ美術』であり、美術家は『役に立つ美術家』でなければならない」といい、「真に優れた美術家とは、技巧に於いても内容に於いても、人の魂に食い入つてこれを揺り動かし、日本国民としてこの戦争を勝ち抜く心構へを、弥が上にも昂揚せしむる作品を生む美術家でなければならない」とする。

 何とも稚拙で一方的かつおそろしい論だが、藤田嗣治らはこの主張に呼応して、むしろ意気高く協力しているように見える。藤田は自らが描いた「シンガポール最後の日」について、「ブキテマの占領した高地で死に瀕する我が戦友を、他の兵士が抱き上げながら、今にも陥落せんとするシンガポール最後の日の姿を此の世の見納めに見せてゐる図である」と解説する。

 平櫛少佐は「戦争は文化の母、創造の父である」とまで書いて美術家たちを扇動する。数々の反戦画を生んだことを考えればそれもはずれてはいなかったと言えるか。今日、“昭和の日”。
[PR]

by greenerworld | 2010-04-29 17:18 | 森羅万象  

<< 史上最悪の原油流出 東電からの「お知らせ」が変わった >>