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[BOOK]フグはフグ毒をつくらない

f0030644_20433146.jpg野口玉雄著
成山堂書店(ベルソーブックス036)
2010年6月28日発行
本体1,800円+税

 「河豚は食いたし命は惜しし」と俗に言う。ブログ子は高級なトラフグ料理などにはとんと縁がないが(最後に食べたのはいつのことだろう)、日本人は縄文時代から性懲りもなく、命を賭してフグを食してきたらしい。

 ところが、フグ毒はフグ自体がつくり出したものではないという。それが証拠に、海底から10m以上離した海面網いけすで養殖されたフグは毒をもたない。もちろん陸上養殖されたフグも無毒。著者は、フグ毒(テトロドトキシン)は、餌を通じてフグに蓄積されていくと考えている。海中にはテトロドトキシンを産生する細菌などの微生物がいる。このテトロドトキシンが、食物連鎖を通じて生物濃縮され、フグにたどり着いているようだ。毒化するフグは、フグ毒に対して耐性を持っている。それで、フグ毒を体内に蓄えることができる。しかしさすがのフグも、大量のテトロドトキシンを摂取(腹腔注射)すると中毒してしまうのだそうだ。

 フグが毒化するのにどんなメリットがあるのか。それは第一に敵に補食されないということである。無毒な養殖フグは免疫力が弱く病気や寄生虫に冒されやすいし、水槽やいけすの中で、かみ合いが起こる。ところが、テトロドトキシンを含む餌を与える(もちろん有毒化する)と、免疫力が高まりかみ合いも減るというから、テトロドトキシンがフグの健康にも役立っていることがわかる。他の捕食生物が食べない有毒な餌を食べることができるということも、メリットの一つだろう。

 養殖されたフグには毒がないとなれば、あの禁断の─フォアグラよりもアン肝よりもカワハギの肝よりも美味と言われる─フグの肝も味わえることになる。しかし、厚生労働省は、これを認めていない。有毒な天然フグと区別することが難しいからだ。それなら閉じられた流通経路の中で厳密に履歴を管理することで、フグ肝を食べられるようにしようと、佐賀県の嬉野温泉は「フグ肝特区」を申請した。ところが、この経済特区申請も厚生労働省から却下された。理由は完全に無毒なフグを生産する科学的な方法が確立しているとは言えないというもの。

 現実にはすでに流通しているトラフグの8割が養殖物なのだという。つまり出回っているフグの多くは無毒。著者らは実際にフグ肝料理の試食会を催し(ただし事前にフグ毒検査をし無毒を確認した)、その美味さを確認した。毒のないフグ肝も今は有害廃棄物として、厳重な管理の元で処理されている。もったいない話だ。

 ちなみに、中には毒のほとんどないフグもいる。西日本でよくフグの一夜干しなどとして売られているシロサバフグやクロサバフグは無毒で素人でも料理できる。有毒なフグも、個人が自分で料理して食べることまで禁じられているわけではない。しかし素人判断、素人調理は危険である。自分で釣ったフグを料理して食べようなどとは、くれぐれも思わないように。
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by greenerworld | 2010-07-09 20:47 | レビュー  

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