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レアアースと中国の環境問題

 世界のレアアース(希土類元素)生産の実に95%以上が中国に独占されている。中国は戦略物質としてレアアースを政治的に利用している、というのが中国にレアアースを頼っている(日本などの)側の言い分。しかし中国は日中間の尖閣諸島でのトラブルが起こる以前から、レアアースの輸出制限(割当量の削減)を表明していた。理由は環境問題への対処だった。

 レアアースは、17種の元素(スカンジウム、イットリウムと15のランタン族元素)の総称である。代表的なネオジムは、モーターや発電機の小型効率化をもたらす強力な永久磁石を作るのに欠かせない。ハイブリッド車も電気自動車も風力発電機にも、ネオジム磁石が使われている。ディスプロシウムはネオジム磁石に少量加えることで性能を高めるほか、光磁気デバイスなどの材料にも使われる。テルビウムは半導体や光デバイス、高輝度照明などに使われる。ハイテク産業、クリーンエネルギー革命の文字通りキーエレメント(カギとなる元素)がレアアースなのだ。それが中国に独占されているわけで、日本をはじめ西側産業諸国は首根っこを押さえられている。

 だが、実はプロメチウムを除き、レアアースそれぞれの地殻中に含まれる総量はそれほど少ないわけではない。ただしレアアース単体やその化合物鉱石としてとれることはなく、鉱物の中にごくわずかに含有されるだけだ。それゆえ「レア」なのである。

 こうした特性ゆえに、レアアースの採掘・精錬には非常に手間とコストがかかる。取り出される物質に比べて大量の廃棄物が発生するし、精錬には強い酸が使われる。1980年代半ばから中国がシェアを伸ばしてきた理由は、人件費の安さと廃棄物や廃液処理にコストをかけない生産方法にあった。流れ込んだ廃土や廃液は農地を使い物にならなくし、生き物の命や飲み水を奪う。中国のレアアース生産は深刻な環境破壊をもたらしてきた。こうした採掘には違法なものも多いが、合法的な採掘であっても環境対策はおざなりだという。

 中国政府にとって、レアアース資源保護の観点からも、違法採掘対策は急務だ。もちろん政治的な意図もあるのだろうが、輸出制限の背景にこうした違法採掘とそれがもたらす環境破壊があることは確かだ。ただしそれが功を奏するかはわからない。密輸出も後を絶たないと言い、輸出禁止措置も実態は一部骨抜きになっている可能性がある。禁輸による価格高騰は、中国のレアメタルマフィアにとって大きなビジネスチャンスだからだ。

 ハイテク産業、クリーンエネルギー産業が一方でこうしたダーティな採掘・精錬、ダーティなビジネスによって支えられていることは知っておく必要があるだろう。20年後には中国のレアアース資源は掘り尽くされ、後には不毛の大地ばかりが残っているかもしれないのだ。
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by greenerworld | 2010-10-25 21:00 | 環境汚染  

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