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温室効果ガス、Now And Then

 昨年暮れ、環境省が2009年度のわが国の温室効果ガス排出量速報値を公表した。例年なら11月に公表されるものだが、今年はなぜだかこの時期にずれ込んだ。温室効果ガス排出量は90年比▲4.1%。これに京都議定書で認められている森林吸収分3.8%を含めれば▲7.9%と、京都メカニズムによる排出量取引分を含めなくても、京都議定書の目標を達成したことになる。森林吸収はあいまいな取り決めだが、温室効果ガスの削減は2008年以降の景気後退が効いている。こと温暖化対策に関しては「リーマンショック様様」である。もっとも、メタン、代替フロン類3種の、CO2以外の温室効果ガスの大幅な削減の寄与分が大きい。エネルギー起源のCO2は基準年比で1.5%のプラスなので、大きいことは言えないかもしれない。
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      温室効果ガス部門別排出量の推移 出典:環境省発表資料より

 部門別でCO2が大きく減っているのはは産業部門、つまり工場からの排出で、19.9%のマイナス。同様に工業プロセス(主にセメント製造)も30.4%減っている。これに対して業務部門は基準年比では33.6%も伸びている。家庭部門も26.9%の増加。一方、自動車を中心にした運輸部門は5.4%増に。

 もっとも2010年度は09年比で増加することは間違いなさそうで、喜んで? ばかりもいられない。ただ、2010度の増加要因は夏の猛暑とエコポイントによる景気刺激策が大きく、2011年度にこの効果がはげ落ちてくれば、また減る。どっちみち、景気の行方に左右されるのは情けない。

 民主党政権は2013年度に導入を計画していた、キャップアンドトレードの排出権取引制度導入を引っ込めてしまった。先送りという形だが、2013年までには総選挙があり、民主党が負ける公算が高いので、事実上撤回といっていいだろう。有力支持母体が大手企業の労働組合であるだけに、法人税減税と並び、産業界に配慮したものだろう。財界の支持を自民党から奪おうという意味もあるのだろうが小手先の対応である。2020年にマイナス25%という目標もそのうち引っ込めるのではなかろうか。

 産業部門の大幅な減少の理由には、景気低迷の他、この間の産業界の省エネ努力もある。しかし、国内の産業構造は大きく変わった。素材・組立工場は撤退したり、コストの安い海外に出ていったりした。その分は進出先での排出に置き換わったわけだ。製造業の空洞化が進んだ一方、さまざまな業態の小売業が増えた。90年にはコンビニはこれほどまでに街角にあふれていなかったし、大型ショッピングモールやロードサイドの大型小売店舗も少なかった。福祉・介護、IT関連の仕事は急拡大した。この結果、二次産業の就業者数は90年の2,099万人から、09年は1,589万人に減少する一方で、三次産業は3,669万人から4,366万人に増加している。サービス産業化が進展したことが、業務部門の排出量増加の原因とみていいだろう。

 一方家庭部門では、人口はピークを打ったが世帯数の伸びが続いている。基本的な家電製品は世帯単位で保有するので、世帯数が増えればエネルギー消費も増える。この傾向はこの先しばらく続く。温水洗浄便座、食器洗い機、衣類乾燥機、パソコンなども普及した。ただし、これも2015年ごろをピークに減少に転じる可能性がある。世帯数が減り始めるからだ。

 運輸部門の排出量は2001年をピークにして緩やかに下降している。この間乗用車の登録台数は増えており、プリウスが普及したのは最近だ。この10年ほどの間に大きく変わったのは、1700cc以上のクルマが減って燃費のよい軽自動車が増えたこと。さらに平均走行距離も短くなったこと。小さなクルマで、ちょこっと乗るという使い方になってきたわけだ。若者のクルマ離れは、雇用情勢の悪化も原因で、つまり非正規雇用を増やした自動車メーカー自身にも責任がある。しかしそもそも若者の数が減っており、かつてのモータリゼーションを支えた団塊世代は老後を迎えた。都市居住者にとっては、クルマを持つことがコスト高であると同時に、クルマを持たなくても不便がない。こうした変化を背景に見ると、運輸部門は今後も低下していくだろう。

 20年間の温室効果ガス排出量の推移は、それなりにこの間の日本社会の変化を反映している。
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by greenerworld | 2011-01-05 20:36 | 環境エネルギー政策  

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