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あらためて水素社会が実現しない理由

 ツイッターを始めてから、脱原発や脱化石燃料社会を願う人の中に、水素神話や水素エネルギーに対する誤理解がかなり根強いことに気づいた。かつて燃料電池がもてはやされたときに、水素は地球を救うなどと言われたことがまだ尾を引いているのだろうか。確かに、燃料電池で水素と大気中の酸素を反応させて電気を取り出すのは、効率も高く、あとは水になるだけで、CO2も有害汚染物質も排出しない。クリーンであることは間違いない。しかし、以前も書いたが、水素は電気と同じ二次エネルギーである。つまり何らかのエネルギーを投入して作らなければならない。そこで熱力学の法則が働く。無から有は取り出せないし(第一法則)、必ず使いにくいエネルギーが生じてしまう(第二法則)。

 電気の場合、一般的な火力発電(汽力発電)では化石燃料を焚いて高温の蒸気を作りタービンを回し、そのタービンの回転で発電する。発電効率は温度差が大きいほど高くなる。復水器で蒸気を冷やすのはこの温度差を作り出すためだ(その過程で温排水が出る。これは原子力発電も同じ)。もちろん排気にも熱が含まれている。こうした熱損失なしには、電気を作ることはできない。

 水素も同じである。水素は単体では地球上にほとんど存在しない。水素を得る方法は主に2つある。炭化水素(化石燃料)から改質して取り出すか、水を分解して取り出すかだ。前者は家庭用燃料電池「エネファーム」で実現している。ただし改質の際にCO2は発生するため、効率は高いが完全にクリーンだとは言えない。そこで、再生可能エネルギーを用いて水から水素を作れば、全くゼロエミッションになると考える人たちもいる。こういう水素を「R水素」と呼ぶらしい。

 以前(http://greenerw.exblog.jp/15156360)も書いたが、南九州の屋久島で、鹿児島大学などが水力発電を使った水素ステーションと燃料電池車の走行実験を行った。水力発電で得られた電気で水を電気分解し、水素を製造、精製、乾燥圧縮してホルダーに蓄えた。その結果、総合的な効率は22%にとどまったという。つまり水素にすることによって、元の電気の持つエネルギーがたった4分の1~5分の1になってしまったのである。しかも使うときのはこの水素を燃料電池で電気に変える必要がある。効率は40%程度なので、最終的なエネルギー効率は8.8%になってしまう。なんと10分の1以下だ。これでは元が再生可能エネルギーとは言え、いくらなんでもむだづかいと言われるのではあるまいか。

 工程(仕事)を重ねれば重ねるほどエネルギー効率が低下するというのも、また熱力学の法則が導く真実なのである。考えてみてほしい、R水素製造では、再生可能エネルギーで起こした電気を使って水を電気分解する。使うときはその水素を燃料電池で電気に変える。そのたびごと使えるエネルギーは減る。最終的に電気として使うなら、再生可能エネルギーで作った電気をそのまま使えばいいと、子どもだって思うだろう。「電気は貯められないから」と言われるかもしれないが、極低温超高圧圧縮を必要とする水素貯蔵のためのエネルギーを考えれば、電気をそのままバッテリーに貯めた方がまだ効率的だ。しかも水素は極めて微細な空隙からも容易に漏れてしまう。

 燃料電池に再生可能エネルギーからの水素を使うのはかようにむだな話なのである。燃料電池はむしろ化石燃料の効率的利用技術として考えるべきだと、ブログ子は考えている。規模によらず発電効率が高いのは大きな利点で、定置用のコジェネ電源として使えば大いに意味がある。低温廃熱を給湯や暖房に利用することで80%以上のエネルギーを利用できるからだ。

 再生可能エネルギーは、ほぼ全てが太陽エネルギーが元になっている。われわれは頑張っても太陽エネルギーのごく一部しか使うことができない。自然にも将来世代にも負担をかけないためには、再生可能エネルギーといえども賢くむだなく使うことが大切なのだと言いたい。
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by greenerworld | 2011-02-11 12:34 | エネルギー  

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