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圏外でも計画的避難、国はようやく認めたが…

 弊ブログでは繰り返し、同心円状の避難区域設定は実態を表していない、汚染実態に合わせた避難地域設定をすべきだと言ってきた。ようやく昨日になって、国は「計画的避難区域」を設定し、一か月をメドに避難を実施することを発表した。3月28〜29日に現地で調査を行った京大今中助教を代表とするチーム(調査チーム)が、飯舘村内の汚染状況をまとめ発表したのは4月4日。われわれ(後方支援チーム)はこの結果を受けて村に4項目の提案を行い、国や県に対しては6項目を要望した(こちらを参照)。ここでわれわれが提案したのは全村避難ではなく、汚染度に応じた対応だ。村内でも東北部のように比較的汚染度が低い地域もある。一方南部地区の汚染度は高く、一刻も早く避難すべきと思われたからだ。国の対応があまりに遅かったこと、いまだに杓子定規的な区域設定であることには疑問を持つが、国が補償を含む方針を示したことでとりあえず一歩前に進んだ。

 国はこれまで放射線の影響について、線量率(瞬間的な被曝)を元に、胸部X線検査程度だから大丈夫、直ちに健康に影響はない、安全だと繰り返してきた。しかし、こういう被曝は小規模な事故などで短時間に放射線を浴びた場合には当てはまるが、今回のように広範囲に高濃度に汚染された場合には、その場所に留まる限り放射線を浴び続ける。つまり、積算値で影響を論じなければならない。ほとんどが30km圏外の飯舘村では、そこでまだ暮らし仕事をしている人がいるわけで、瞬間的な被曝の話をしても無意味だ。

 先月21日、ICRP(国際放射性防護委員会)から、被曝限度量の緩和を提案されると、政府は見直しに着手、積算線量で緊急事故後の20ミリシーベルト(mSV)という値を基準にすることを検討してきた。しかし、これはあくまで1年間の予測積算被曝量である。文科省の発表はこのあたりから変化し、高濃度地域ではこれまでの積算で●mSvという数字を使うようになった。ところがその数字は3月23日からのもので、最も線量率の高かった15〜22日の1週間分を加えていなかった。それでまだ「直ちに健康に影響はない」としていたのだ。ところが調査チームのレポートでは、飯舘村南部で屋外に居続けた場合、3月29日時点ですでに30mSvを超えていることが示された。屋内にいたとしてもその半分程度を被曝していたことになる。約3週間で屋内にいても20mSvを超えてしまう。繰り返すが、ICRPの基準値はあくまで1年間の予測被曝量だ。政府もさすがにこれを安全だと言い続けることができなくなったのだろう。

 一方、データを提示しないまま、ひたすら安心させようとする政府の姿勢は住民を混乱させた。村に講演に来た放射線医学の専門家も、住民に対して汚染情報を提供しないまま、安全安心を振りまいて帰ったのだ。計画避難地域指定発表のつい2日前にも「原子力村」の住人である近畿大学教授が来て話をしていったという。彼らにとってみれば、自分たちの言ったことが国から否定されたわけだ。どう言い訳するのか聞いてみたい。

 結局、政府のこれまでのやり方は全てを隠そうとし、事故は汚染はたいしたことはないと言い続け、客観的データから実態が明らかにされて破綻したといえる。汚染地域の分布についても、SPEEDIのシミュレーションや米軍の空からの調査によって早くからわかっていた。事故がレベル7だと今日になって発表したこともそうだ。多くの(原子力村の住人でない)専門家は早くからレベル7相当を指摘していたし、保安院も安全委員会もそれを知っていた。汚染実態が明らかになり、これ以上隠しきれなくなったということだろう。なんという稚拙なやり方だろうか。

 ともあれ、飯舘村を含む汚染地域の住民の皆さんには、これからもまだ苦難の道が続く。避難期間は長期に及ぶ可能性が高い。生活や仕事の再建、地域・自治体の再建と大きな負担がのしかかる。健康への不安もあるだろう。さまざまなケアが必要だ。しかし、希望はある。

 以下はブログに寄せられた飯舘村の方からのコメントの抜粋だ。

 「今までのことは水に流して、避難時、避難後の高齢者へのリスク管理等、村民と行政一体となって頑張ります。牛等の家畜の移動も計画的に頑張ります」

 このコメントやツイッターで発信する村の若者たちの言葉は心強い。繰り返し言うが、今回の事態に飯舘村は何ら責めを負うものではない。村は国が進めた原子力政策の結果、東京電力が引き起こした原子力公害の犠牲者である。またその背景にはGDPを指標とする成長一辺倒の経済政策や都市住民の“豊かな生活”があることは言うまでもない。

 村民が幾世代にもわたって営々と築き上げてきた美しい村は、いまや目に見えぬ放射能に汚染された村になってしまった。地方住民が一方的に国策の犠牲になる構図は、谷中村(足尾鉱毒事件)や水俣と同じである。

 われわれはこのような悲劇をもう繰り返さぬと誓ったのではなかったのか。誰か(何か)を犠牲にした繁栄の追求はもうやめにしよう。あらためて全国の皆さんに、原発公害被害地域への支援を訴えたい。
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by greenerworld | 2011-04-12 20:39 | 3.11後の世界  

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