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「革新的エネルギー・環境戦略」は初めから破綻

●10年も先送り

 野田政権が決めたエネルギー・環境戦略がデタラメだ。まずそもそも国民的議論に示した将来の原発比率は2030年時点。そこで、ゼロか15%か25%かの3つのシナリオを国民に問うたのだった*1。それなのに、9月14日発表の『革新的エネルギー・環境戦略』*2(以下『戦略』)では「2030年代に原発稼働をゼロにする」と置き換えられてしまった。2039「年度」までと考えれば10年も先送りされたわけである。『戦略』では「これまでの多様な国民的議論を踏まえ」としながら、この変更について説明は全くない。

*1: http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120629/20120629_1.pdf
*2: http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120914/20120914_1.pdf

●3つの原則と建設中の原発の取り扱い

 『戦略』では、原発に依存しない社会の実現に向けた3つの原則を掲げる。

 1)40年運転制限制を厳格に適用する
 2)原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ、再稼動とする
 3)原発の新設・増設は行わない

 ところが早くもほころびが現れた。枝野経産相が、三村青森県知事に対して建設中の原発については継続を容認すると発言したからだ*3。現在建設中の原発はJパワーの大間原発(進捗率37.6%)、中国電力島根3号機(同93.6%)、東京電力東通1号機(同9.7%)がある。ただし東日本大震災以後工事は中断している。

 原発の建設には通常7〜10年かかる。完成が間近い島根3号機(計画では運転開始は今年春)があと数年で稼働できたとして、40年後の2050年代半ばまで運転できる。東京電力東通1号機(2011年1月着工)については、枝野大臣は賠償問題などから「当面の建設再開を否定した」(河北新報*4)というが、今後の再開含みだ。もし工事再開したとすると、早くて2020年代の運転開始だろう。そうしたら2060年代まで運転できることになる。さて、30年代に原発稼働をゼロにするには、20〜25年程度で運転停止しなければならないが、どうするつもりなのか? 採算が合わないでしょうから諦めてくださいと言うつもりか。

*3: http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2012091502000239.html
*4: http://www.kahoku.co.jp/news/2012/09/20120916t21024.htm

●核燃サイクルと再稼動

 高速増殖炉「もんじゅ」については研究を終了するとした。高速増殖炉はどだい画餅であり、これは評価しよう。しかし、つまり核燃料サイクルは諦めたということではないらしい。使用済み核燃料の再処理は続けるというからだ。使用済み燃料からプルトニウムを取り出し、ウラン燃料との混合燃料(MOX)として軽水炉で使用する(プルサーマル)ということだ。しかし、リサイクルとは名ばかりで節約できる量はわずか、そのために再処理過程で大量の死の灰を環境中にまき散らし、危険を冒す必要があるのか。第一、六ヶ所の再処理工場はトラブル続きでまだ稼働できないでいる。六ヶ所がうまく稼働できるようになったとしても、今後原発が減っていくにもかかわらず再処理を進めると、プルトニウムはどんどん余っていくことになるのだが。

 実は『戦略』は再処理について触れていない。「直接処分の研究に着手する」とあり、しかももんじゅの研究は終了するので、核燃サイクルは変更し、再処理も中止するとしか読めない。しかし、青森県は、核燃サイクルが撤回されるなら海外から返還される放射性廃棄物(ガラス固化体)の県内搬入を拒否、すでに運び込まれた使用済み核燃料の各原発への返還を検討すると報道された*5。六ヶ所村議会は村内貯蔵の使用済み核燃料搬出を国に求める意見書を採択し、野田総理に送付した*6。こうした青森県からの反発を受けて、政府は原案修正を迫られ9月10日にに予定されていた『戦略』の公表は14日にずれ込んだのだ*7。急遽入れたのであろう県への配慮のにじみ出た文章が「核燃料サイクル政策」の項の冒頭にある。

*5: http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120904-OYT1T01647.htm
*6: http://www.47news.jp/CN/201209/CN2012090701001609.html
*7: http://www.47news.jp/CN/201209/CN2012091301000976.html

 現在すでに、各原子力発電所の使用済み核燃料プールには使用済燃料が溜まり続け、空き容量が少なくなっている*8。もしこれらの使用済み核燃料が返還されて各原発の使用済燃料プールに戻されたら、1〜2年でプールは満杯になり原発がそれ以上稼働できなくなるところが出てくる。戻されなくても、青森県に運び込めなければ、最短で2.3年(柏崎・刈羽)、最長でも13.1年で使用済燃料プールは満杯になる。その青森の方でももう保管の余裕がない。

*8: http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4110.html

 あれだけ莫大な予算をかけ失敗に失敗を重ね、深刻な事故まで起こしてなお核燃サイクルにしがみついてきたのは、ただ「最終処分問題を先送りにするため」の方便でしかなかったとも言える。それを変更するのだから、最終処分(言わばトイレの建設)は待ったなしで、「研究に着手する」なんて悠長な段階ではない。しかし、核燃サイクルをやめると言ったとたんすべて破綻するため、でも再処理は続けますと言わざるを得なくなったというわけだ。ただしこれは自民党政権と原子力ムラの責任が大きいのであって、民主党や野田政権の責任とばかりは言えない。

 考えてみるに、すでにこの政権はレームダック状態。遅くとも10か月以内には総選挙になる(任期満了は来年8月だが、7月に参議院選挙があるため、遅くても衆参同時選挙だろう)。「近いうち」の約束は反故にするつもりだろうが、先は長くない。あとは次の政権が決めてくれという、責任放棄の姿勢がありあり。これほどいい加減な「戦略」はついぞ見たことがない。政権が変わればすべてご破算という話になるかもしれない。「国民的議論」とはいったい何だったのだろう?
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by greenerworld | 2012-09-16 20:13 | 3.11後の世界  

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