管理者へのメール / 管理者のプロフィール


黄砂の季節です

 黄砂の季節がやってきた。花粉症を引き起こすスギ花粉の大きさが30μmほど(μmは1000分の1mm)なのに対して、黄砂の粒子は平均2〜3μm程度。この小ささゆえに、いったん舞い上がると長く空中に浮遊する。世界には北アフリカ、中央アジア、オーストラリアなどに大きな砂漠・乾燥地帯がある。そこで砂塵嵐(ダストストーム)により巻き上げられた細かい鉱物粒子が上空に達し、低気圧の移動に伴って遠く離れた地域に運ばれる。これらを総称して「風送ダスト」と呼ぶ。大気中に漂う風送ダストの総量は全体で20億トン以上あると言われる。その半分が北アフリカのサハラ起源だ。

 一方、日本にやってくる風送ダストは主にモンゴルや内モンゴルの乾燥地帯が源。ここで巻き上げられた鉱物粒子が、ジェット気流に乗りはるばる日本までやってくる。これを「黄砂」と呼んでいる。もっとも日本には黄砂ばかりでなく、北アフリカや中東起源のダストも届いているようだ。風送ダストは地球規模で移動している。黄砂も遠くハワイや北アメリカまで到達しているという。

f0030644_14322736.png

黄砂の発生源と日本(SPRINTERS 大気エアロゾル(微粒子)予測動画2013.3.9より)


 風送ダストは北極や南極、グリーンランドの氷の上にも積もっているので、氷床をボーリングすると過去に積もったダストを採取することができる。これを分析したところ、地球が寒冷化した氷河期にダストが多くなっていることがわかった。氷河期には極地方と赤道地方の温度差が大きくなり、低気圧やジェット気流が強まると同時に乾燥化が進むので、風送ダストの量も増えると考えられている。

 風送ダストは赤外線を吸収する温室効果と太陽光をはね返す作用を併せ持つ。また海に降り注ぐダストは、外洋で不足する鉄分を補給し植物プランクトンの増殖を助ける。植物プランクトンはCO2を固定し、やがて深海に沈降することで、大気中のCO2を取り去り、ゆっくりとではあるがやはり温暖化を緩和する働きがある。一方で雪や氷の上にダストが降り積もれば、雪氷を溶かし太陽光をはね返す力を弱めると同時に、そこに生える地衣類などの栄養となる。ざっと見ただけでも、気候変動に対して実に複雑な作用を及ぼす。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)がこれまで発表してきた気候変動モデルには、風送ダストの影響はまだ十分に反映されているとは言えないそうだ。

 「黄砂アレルギー」という言葉が使われるようになったが、実際に動物実験では風送ダストがアレルギー症状を悪化させるという結果が得られている。微粒子であるダストそのものが免疫系に悪影響があるのに加え、付着しているカビや細菌由来成分がアレルゲンとなると考えられる。またNOx、SOxのような酸性の大気汚染物質がダストと結びついて運ばれることも考えられる。発生源に近い中国北東部や朝鮮半島では地表付近に漂う黄砂の量も多い。韓国では黄砂現象があった期間に65歳以上の高齢者の死亡率が2.2%増加、とくに気管支疾患が原因の死亡率が4.1%高くなったという報告がある。「春の風物詩」とばかりは言っていられない。
[PR]

by greenerworld | 2013-03-09 14:41 | 花鳥風月  

<< 2年目の3月15日 シンポジウム:地域から考えるエ... >>