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電力自由化の陰に見え隠れする原発と大手電力会社の延命

 今回の「電力小売全面自由化」は、単に家庭部門までの電力小売事業が開放されるに留まらず、これまで既存大手電力会社の一部門であった送配電部門が分離されることが大きな改革点だ。その部分に焦点を当てつつ、いくつかの問題を指摘したい。
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 発電から送配電、小売に至る「垂直統合型」の事業形態をもち、地域を分けて事業の独占が認められていた、これまでのいわゆる九電力体制から、九五年にまず発電部門が自由化され、小売部門も二〇〇〇年以降大口から自由化が進められてきた。しかし、送配電部門を既存電力会社が握っているため、電気の配送料である託送料金の設定や電力の受け入れに関しては既存電力側の思惑で決められ、自由な競争を妨げているという批判が絶えなかった。今回は五年後をめどに送配電部門の法的分離を義務づけたうえで、発電部門と小売部門には原則として自由な参入が認められるようになった。既存電力会社も新規参入事業者(新電力)も同じ条件で、託送料金を送配電会社に払い、発電した電気を送り、売ることができる。

 ただ、送配電部門は「別会社」になるだけで、九電力それぞれのグループ内にそのまま留まる。そして送配電部門に関しては地域独占と総括原価方式が維持されることになった。東京電力は四月から既に法的分離を先取りしたかたちで組織改編を行い、送配電部門を「東京電力パワーグリッド」として持株会社「東京電力ホールディングス」の傘下に置いた。他の電力会社もいずれ同様の対応を取ると思われる。東京電力は火力発電部門と小売部門も別会社とした一方、原子力発電部門は福島第一原発事故に伴う賠償・廃炉・復興推進部門とともに持株会社の一部門とした。

 東京電力パワーグリッドはかたちの上では別会社でも、利益は持株会社に合算される一〇〇%子会社、しかも使用済み燃料処理費の一部と、原発の立地対策費や推進PRに使われる電源開発促進税がこの託送料金に上乗せされて全需要家から電力使用量に応じて徴収される。将来的には廃炉費用もここに加わるかもしれない。どこから電気を買おうと原発関連費用がついて回る。

 さらに自由化は既存電力会社を原発再稼働へと向かわせている。稼働開始から四〇年超の老朽原発は原則として廃炉にする「四〇年ルール」も、原子力規制委員会が認めれば延長できる例外規定で骨抜きになった。安全対策を施して稼働延長しても採算の取れない、出力の小さい原発は廃炉を決定するが、大型原発は最大二〇年延長させてめいっぱい稼ぐ目論見だ。一方で燃料費の安い石炭火力の建設計画も目白押しで、自由化による料金値下げ圧力は、なんのことはない原発とCO2排出量の多い石炭への回帰に繋がっているのである。

 その反面、再生可能エネルギーは固定価格買取制度の改定で導入が頭打ち。供給に限りがあり再生可能エネルギーの電気を選びたくとも選べない状況にある。電力を自前で調達できない新電力は卸電力取引所から電力を供給するが、卸取引所に供給余力のあるのも当面は既存電力会社だけ。新電力を選んだつもりが中身は既存電力会社だったということも。

 来年四月には都市ガスの小売全面自由化も控える。送配電分離同様、東京、名古屋、大阪の三大都市圏で「ガス導管分離」も行われる。東京電力、中部電力、関西電力は都市ガスの原料であるLNG(液化天然ガス)輸入の上位を占め、LNG基地も持ち、すでに自由化されている大口部門に参入ずみ。電力自由化のみならず都市ガスを含むエネルギー自由化とそれに伴う業界の再編の中で、大手電力会社を総合エネルギー企業として生き残らせようというのが、経済産業省の思惑なのだろう。
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by greenerworld | 2016-04-16 19:01 | 環境エネルギー政策  

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