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わらや木からつくるバイオエタノール

 エタノールを輸送燃料に使うことに対しては根強い批判がある。エタノールの原料はサトウキビやトウモロコシなど、基本的には食糧である。これは動植物油脂を原料とするバイオディーゼル燃料(BDF)にも言えることだが、世界には日々の食べ物にも事欠き餓死する人々がいる状況の中で、食の足りた人々が移動の自由という贅沢を得るために食料を燃料に使うようなことがモラルとして許されるのか、簡単に言えば、批判の焦点はそこにある。

 私は、自動車を小型化し速度も遅くすることによって、燃料消費を劇的に減らすことこそまずやらなくてはならないことだと思っている。その上で、代替燃料としてバイオマスエネルギーを使うべきで、いまのような必要以上にずうたいが大きく重く速い車に乗り続けることをやめなくてはならない(朝日新聞東京版2006.7.25朝刊「私の視点」参照)。

 そうやって燃料消費を減らしたうえであっても、食料を燃料に変えることに関するモラルの問題は残る。



 セルロースエタノールは、バイオエタノール燃料にまつわるこうした憂鬱な気分を少し和らげてくれる妙薬かもしれない。その名の通り、セルロースエタノールの原料はセルロース、つまり植物の繊維だ。植物の細胞壁の主成分でもあり、炭水化物としては地球上に最も多く存在するが、残念ながら人間はこれを消化できないからだ。

 セルロースはあらゆる植物に含まれている。特に茎を強靱にしなやかにするのに役立っている。トウモロコシも麦も稲も、食べる部分よりそれ以外の部分の方が多い。その食べられない部分の主成分がセルロースである。木ももちろんセルロースの宝庫だ。

 セルロースはグルコース(ブドウ糖)がたくさん結びついてつながったものだ。このつながりを切ってやればグルコースに変わる。そうなれば酵母の出番だ。トウモロコシやサトウキビの糖蜜からつくるエタノールと同じように、発酵によってグルコースからエタノールができるのだ。

 すると、食料を生産し、余った茎や葉のような部分を燃料にするという選択が生まれる。森林資源や廃木材をセルロースエタノールに変えようという研究開発も行われている。綿や麻のような布や紙だってセルロースが主成分だから、古着や古紙も燃料に変わるわけだ。

 ミソはセルロースをグルコースに分解するところである。自然界にはセルロースを分解して栄養源としている生物がたくさんいる。そうした生物は、セルロース分解酵素を持っている。しかし、短時間に効率よくセルロースをグルコースに変えられなければ工業化はできない。

 カナダのバイオテクノロジー企業アイオジェン・コーポレーション(Iogen Corporation)は、このセルロースエタノール生産用に効率の良い酵素を開発し、販売している。ビジネスパートナーにはロイヤルダッチシェル、ペトロカナダ、ゴールドマンサックスなどが名を連ねる。

 もちろん、セルロースエタノールだからどんどん使って良いということにはならない。何度も言うように燃料消費の削減が先だ。わらだって家畜の餌になるし、肥料になるし、暖房や調理にも使えるのだから。しかし、食糧を作りながらエネルギーも得られる。発展途上国にこそ生かしてもらいたい技術だ。

 まだまだ他にもバイオ代替燃料はある。バイオブタノールも新しい有望な選択だ。次回はその話をしたい。

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by greenerworld | 2006-07-25 08:38 | エネルギー  

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