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[Book]'Beyond Oil'─石油生産は減少局面を迎えたのか?

f0030644_13562691.jpg ピークオイル仮説というのは、石油地質学者のM.K.ハバートが提唱した理論に基づいている。大まかに言うと、石油の生産量は、その埋蔵量の半分を掘り出したところで、ピークを迎え、後は次第に減少するというものだ。産出量を縦軸に、時間(年あるいは日)を横軸にしてグラフにプロットすると、ベル型の正規曲線を描くというのである。

 この考えに基づき、ハバートは1956年にアメリカの石油生産量のピークが1970年代初頭に訪れ、その後減少すると発表した。その当時、アメリカは世界一の石油生産国であり、多くの専門家や企業家はその考えを認めなかった。しかし、その後ハバートの予言通り、アメリカの石油生産量は1970年に最大となった後、二度とその生産量を超えることがなく、曲線をなぞるように減少を続けている。1969年、ハバートは同様に世界の石油生産についてもそのピークを予測した。それによれば、地球全体の石油埋蔵量が2.1兆バレルであるとした場合、2000年頃ピークを迎えるというものだ。これをハバート・ピーク(Hubbert's Peak)と呼ぶ。



 ハバートとかつて同僚でもあったケネス・S・ディフェイズが書いた『Beyond Oil』(Hill & Wang, 2005)は、ハバート・ピークのその後を検証したものだ。この本の中でディフェイズは、世界の石油生産は2005年末から2006年初頭にかけてピークを迎えると書いた。2006年に出たペーパーバック版の前書きには、さらに具体的に「2005年12月16日がピークだった」と記されている。これは統計計算上の結論だが、その日にちにはあまり意味がない。多少ずれたとしても、すでに私たちは石油が減少する社会に突入したか、少なくともしつつあるというのが、この本の主たるテーマである。すでに地球上の主要な油田は発見・開発され尽くしており、予測に変化を与えるような大きな油田がストックに加わってこないことも理論的に述べている。

 しかし、ピークオイル説にはもちろん批判もある。アメリカに関する予測は当たったが、たまたまかもしれない。そもそも石油生産量が正規曲線を描くという根拠は薄い。東大大学院の茂木源人助教授はピークオイル説は「数あるシナリオのうちの一つの結果でしかない」(『週刊エコノミスト』臨時増刊8/14号)と述べているし、和光大学の岩間剛一教授は、米国の原油在庫が90年代後半に匹敵する水準にあるにもかかわらず原油価格が高騰している原因の一つとして、ピークオイル説が「投資資金に格好の材料を与えた」(同)とまで指摘している。

 しかし、石油が限りある資源である以上その生産量が右肩上がりに増え続けることはない。いずれピークが来ることは間違いない。それが早いか遅いか、どのような形で訪れるか、である。私たちは「ポストピーク時代」に備えなければならないのだ(ディフェイズによれば、すでに突入しているのだが)。

 ところで「Beyond Oil(石油を超えて)」というタイトルではあるが、ポスト石油時代のエネルギーや社会についての記述にそれほど新味はなく、物足りなさを感じた。再生可能エネルギーやエネルギー効率化などによるソリューションを期待する向きには、いわゆるソフトエネルギーパスやファクターXについて書かれた資料を参照された方がいいだろう。

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by greenerworld | 2006-08-16 13:59 | レビュー  

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