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[Book]『ゴールデンスレッド』─太陽エネルギーに取り組んだ先達たち

f0030644_11321536.jpg ソーラーシステム研究所の蒲谷主幹から『ゴールデンスレッド ソーラーエネルギー2500年の歴史と実証』(K.ブティ+J.パーリン、技報堂出版)という本をいただいた。1985年に技報堂出版から翻訳が刊行されたもので、原著は1980年に出ている。新刊ではなくて旧刊であるが、アマゾン.コムで検索したらまだ絶版にはなっていないようだ。

 一口で言えば、人間がいかに太陽エネルギーとつきあい利用しようとしてきたか、その歴史をまとめた本だ。ゴールデンスレッド(金色の糸)とは太陽光線のことをいうのだろう。

 太陽(おひさま)の暖かさは、古代からもちろん認識されてきたに違いない。いってみれば日だまりや日なた水のぬくもりを、上手に生活に取り入れることは東西広く行われてきたことだ。しかし、産業革命以降はそうしたパッシブ(受動的)な利用にとどまらず、太陽エネルギーを直接利用する技術に取り組んできた人々がいる。



 19世紀後半、太陽熱オーブンや醸造用ボイラーをつくり、さらに蒸気機関を動かしたフランスのアウグスティン・ムショ。同じころ、「太陽熱利用機器の開発が将来の地球の燃料危機を救う唯一の手段」と予言し、ソーラーエンジンを開発したアメリカのジョン・エリクソン。彼らの研究の延長に改良を重ね、太陽追尾型のソーラーエンジン駆動で地下水くみ上げポンプを動かしたオーブリ・エアネス。19世紀末から20世紀前半にかけてはヨーロッパにおいてソーラーコミュニティの建設、アメリカではMITなどによるさまざまなソーラー建築の研究が行われた。日本では、昭和20年代に2万台も売れたという簡便な山本式温水器の成功をきっかけに始まった太陽熱温水器のブームも紹介されている。

 ピーク需要に合わせるためには装置が大きくなりコスト高になること、日照に左右されることからエネルギー貯蔵が不可欠であることなど、太陽エネルギー利用にまつわるデメリットは当時から認識されていた。しかし、製品としては廃れながらも、太陽熱利用のコンセプトや技術のいくつかは現在に脈々と息づいている。ヨーロッパでは「ソーラーコミュニティ」の理念は都市計画や集合住宅の建設において、今や当然のものとなっているし、カリフォルニアやスペインなどで実用化され商用電源として使われている太陽熱発電もこうした流れの先開いた花の一つである。

 日本では、残念なことに太陽熱利用は過去のものと認識され、国の予算も減らされ、多くの企業が撤退してしまった。太陽熱利用機器の設置が前年比マイナスを続けているのは、主要国では日本だけであろう。オール電化などよりはるかにCO2削減効果が高いというのに。

 ちなみに『ソフトエネルギーパス』や『スモールイズプロフィタブル』等を書いたロッキーマウンテン研究所のエイモリー・ロビンスが原著に序文を寄せている。

 もう一つ興味深いのは、産業革命後に早くも将来のエネルギー不足を懸念していた人々がいたという事実である。ポスト石油時代に活きるのは、こうした先達たちの思想や技術だ。埋もれさせてはならないと思った。

本日のモーツァルト的気分:Symphony No. 41 in C, K.551 "Jupiter"  第一楽章

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by greenerworld | 2006-09-17 11:36 | レビュー  

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