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シリコンバレー勢の参入で塗り変わるか太陽電池の業界地図

 英科学誌“NATURE”9月7日号に、シリコンバレーのPV(太陽電池)ベンチャーの記事が掲載されている。現在生産され販売されている太陽電池はシリコンを原料としたものが主流。しかし、シリコンバレーにありながらこれらのベンチャーが手がけるのは、一般的なシリコン太陽電池ではない。CIGSと呼ばれる化合物薄膜太陽電池である。

 シリコン太陽電池のほとんどは、シリコンを結晶化させてスライスして作る単結晶・多結晶タイプ(一部非結晶=アモルファスもある)。もともとは半導体産業で使われるシリコンの「格落ち品」を使ってきた。しかし、2000年以降太陽電池の需要が急増、現在原料となるシリコンが逼迫しており、ここ数年はドイツを中心にヨーロッパでの需要の高まりもあって太陽電池の価格は上昇気味である。生産量世界一を続けるシャープを始め、国内PVメーカーも原料の確保に必死だ。



 これに対してCIGS(銅・インジウム・ガリウム・セレンの略)太陽電池は原料にシリコンをほとんどあるいは一切含まない。しかも、製造方法は結晶を薄くスライスするのではなく、蒸着技術を使うため原料はわずかですむ。その意味ではチップ製造技術の延長にある。

 シリコンバレーのPVベンチャーの一つナノソーラーは、2001年の操業。もう一社のミアソレはハードディスク製造技術を応用した製造法で参入する。

 カリフォルニアは、1980年代の風力発電をはじめ、再生可能エネルギーへの取り組みで全米をリードしてきた。太陽光発電の導入も、バイオエタノールの利用も全米の州の中でダントツ。ただ、生産はこれまでそれほどでもなかった。ここにシリコンバレーの人脈と技術、資本が加わった。ナノソーラーはもともと有機物系太陽電池の生産を目指して設立されたが、CIGSにシフトしたという。同社の製造方法は非常に細かいCIGS粒子をインクのようにして金属フォイル基盤に“印刷”するというものだ。ナノソーラー社は2007年には200MW(メガワット、メガは百万)/年、その後430MW/年の生産を計画している。業界トップのシャープが2005年に何年もかけて到達した生産量が428MWだから、驚異的な計画だ。先に成立したカリフォルニア州の「温暖化対策法(GWSA)」は大きな追い風になるだろう。

 日本でも、CIGS太陽電池に昭和シェル石油、ホンダ、松下電器などが取り組んでいる。昭和シェル石油では宮崎県田野町に工場を建設、2007年明けから生産を始める。昭和シェル石油に出資するシェルの関連会社シェルソーラーは、独自にCIS技術に取り組んでおりすでに結晶シリコン系のビジネスをソーラーワールドに売却した。自動車業界から参入するホンダも2007年の生産開始を表明しており、注目される。

 結晶シリコン系太陽電池産業は装置産業であり、シャープを始めとする国内各社は競って工場・ラインを大きくし、それによってシェアと利益を確保しようとしてきた。しかし、新しい太陽電池は、それほどの巨大な製造設備を必要としないようだ。ただ、CIGS太陽電池の変換効率はまだ高性能結晶シリコンには及ばない。

 しかし、数年後にPVの業界地図が大きく塗り変わっている可能性は否定できない。

本日のモーツァルト的気分:Serenade D-dur "Posthorn-Serenade" ,KV320 第5楽章

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by greenerworld | 2006-09-18 10:20 | エネルギー  

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