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一見明るい先進国の温室効果ガス排出状況だが

一見明るい先進国の温室効果ガス排出状況だが_f0030644_11202586.jpg 日本の温室効果ガス排出量が05年度に1990年比(それにしてもなぜ日本は「年度」にこだわるんだろう。エネルギーや環境の国際統計はカレンダー通りの1年だから、比較がしにくい)+8.1%だったことはすでに紹介したが、10月30日には国連気候変動枠組会議(UNFCCC))から、先進国(京都議定書のAnnex I 国)における2004年までの温室効果ガス排出状況が発表された(GHG DATA 2006)。

 京都議定書では、先進国全体で2008-2012年の間までに1990年の排出量の−5%を達成しなければならないことになっている。今回アメリカを筆頭にする京都議定書離脱組を除くと、−15.3%と、何と目標を軽くクリアしている! これに離脱組を加えても、−3.3%、頑張れば何とか−5%に届きそうではないか。



 しかし事はそう簡単ではない。マイナス分の多くは旧ソ連・東欧諸国にある。これらの国々の多くは、体制移行による混乱から、経済が停滞・後退したため、エネルギー消費などが減少、排出量を減らしているのだ。ところが、これらの国々も次第に落ち着き経済も上向いてきて、2000年以降に排出量を増やし始めているからだ。しかも離脱したアメリカは+15.8で、もともとのパイが大きい(世界全体の排出量の4分の1)ため、アメリカ一国で先進国全体の削減分をほぼ相殺してしまうほど。もちろん、ここに含まれない中国などの発展途上国はもっと大きく排出量を増加させている。世界気象機関(WMO)の発表では、05年のCO2濃度は379.1ppmと観測史上最高を更新した。

 先進国の優等生はドイツ(90年比−17.2%)、イギリス(同−14.3%)である。一方EU内でもスペイン(同+49%)、ポルトガル(同+41%)、ギリシャ(同+26.6%)など、大きく増加させている国もある。EU内平均では−0.6%にとどまっている。

 日本は今後排出権取引など京都メカニズムを利用して何とか目標の−6%を達成しようとするのだろうが、旧ソ連・東欧諸国でも排出権に余裕があるのはブルガリア、エストニア、リトアニア、ラトビア、ウクライナなど、もともと排出量のそれほど大きくない国々が多く、日本の排出量超過分を果たしてまかなえるのか、はなはだ心許ない。しかも、期限が迫ってきており、多くの国々が排出権(カーボンクレジット)を求めて競合すれば、クレジットが高騰することも予想される。ロイター環境ニュースによれば、日本が昨年の排出超過分をクレジットでまかなおうとすれば、現在価格で年間23億ユーロ(約3450億円)が必要となるというが、これがどこまで増えるか予想もつかない。

 もはやチームマイナス6%やクールビズキャンペーンなど、目先を変えるだけの啓発を中心とした自発的な温暖化対策では達成は不可能。かといって残りの短期間に強制的な強力な対策を導入したのでは、社会経済的な混乱が大きすぎるだろう。京都議定書から10年、歴史的な議定書に日本の古都の名を冠していながら、行政は省庁間やセクター間の調整、政治的配慮に重きを置き、中長期的かつ根本的な対策を怠ってきた。そのツケは大きい。しかし不思議なことに、ここに至っても政治家にも官僚にも差し迫った危機感を感じないのだ。

 少なくとも、わが家はこの期間に二酸化炭素排出量を半分以下にしている。嫌々、私なんかよりずっと努力している人も知っている。政治家や官僚の皆さん、責任とってくれよ! そうでなければ、環境モラルも崩壊しかねない。「頑張っている人が報われる世の中」にしてほしい。

 本日のモーツァルト的気分:Serenade No 12 in C minor K.388 第4楽章

by greenerworld | 2006-11-04 11:24 | 環境エネルギー政策  

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