2050年までに太陽熱発電で全ヨーロッパの電力がまかなえる
2006年 11月 16日
集光太陽熱発電(Concentrating Solar Power、CSP)にはいくつかの技術が開発されている。実際にアメリカ・カリフォルニア州モハヴェ土漠ではパラボラトラフ型と呼ばれるタイプが商業稼働中だし、やはりモハヴェで実証されたタワー集光型タイプ(ソーラー1=写真、その後改良してソーラー2に)は、スペインでソーラー3として商用発電プラントの計画が進んでいる。他にパラボラディッシュ型と呼ばれる技術もある。いずれも太陽光を集光して高温をつくりその熱で蒸気タービンやスターリングエンジンを動かして発電する。
日射量の多い砂漠やいわゆるサンベルト地帯では、経済的に他の方法と競争力がある技術だ。地中海の南北沿岸、アフリカ、中東、中央アジア、北米中西部、オーストラリアなど、砂漠・乾燥地帯が広がっている地域で可能性が期待されている。
ただ問題はこうした乾燥地帯は都市もなく、人口も少ないことである。そこで、同報告書では中東や北アフリカから直流高圧送電線を引いて、エネルギー需要地であるヨーロッパに送り込むことを提案しているのだ。2020-2025年に年60TWh(T=テラ、1兆)でスタート、2050年には700TWhまで拡大。送電ロスは10-15%程度であり、電力コストは0.05ユーロ(7.5円)/kWhに収まるという。
日本で同様の技術は成り立つのだろうか。実は日本はサンシャイン計画の中で集光型の太陽熱発電技術にも取り組んだ経験がある。1981年に四国香川県仁尾町で「世界初」の太陽熱発電実証プラントが稼働した(Googleで検索したら、初めて発電した8月6日は「太陽熱発電の日」になっているそうだ)。しかし、いかに日照に恵まれた瀬戸内気候でも、日射量が足らず十分な発電には至らなかった。また規模も小さくコスト的に成立しないとして、実験は終了。それ以後、「太陽熱発電」は日本ではトラウマになってしまった。
海外ではアメリカやヨーロッパにおいて太陽熱発電の技術開発は続けられ、大規模化すれば商業的にも十分に成り立つというところに来ている。木質ペレットといい、日本の再生可能エネルギーへの取り組みってこんなんばっかしや。
ということで残念ながら、日本では日照に恵まれていそうな沖縄でも太陽熱発電にはちょっと無理。日射は強くてもしょっちゅう曇ったり雨が降ったりという気候ではだめなそうな。地続きの乾燥地帯はないし、指をくわえてみているしかないのか。解決方法として、その熱や電力でつくった水素とか、石炭を液化した燃料を日本に運ぶという手がある。石炭は炭素の多い化石燃料だが、液化に太陽エネルギーが使えれば、その分CO2排出は減らせる。この分野の研究は東京工業大学などが国際的な枠組みで進めている。
ヨーロッパでは、イギリス、ドイツ、スペイン、イスラエル4カ国共同で集光太陽熱発電工業協会(ESTIA)が設立されるほど力を入れており、同協会は環境保護NGOグリーンピースと共同で「Concentrated Solar Thermal Power Now!」というレポートも出している(国際エネルギー機関の太陽熱部門も参加)。
さて、先のレポートは中東・北アフリカでの集光太陽熱発電プラント建設はコスト的にもすでに石油価格を下回り、将来的にさらに低下するとしている。加えて、余熱を使って海水から真水をとることもでき、厳しい気象が和らぐプラントの下で作物の栽培も可能になると、副次的効果も期待している。日本も中東や中央アジアで石油や天然ガスの確保ばかりに走らず、太陽熱プロジェクトを進めればいいのに。
エネルギープラントの建設・稼働は長期的な取り組みだ。50年後のエネルギーインフラを考えて今取り組まなければならないのだ。その意味で、ドイツ環境省がこうしたレポートを出し、世論を喚起し、技術開発や政策を促すことの意味は大きい。最後はやっぱり愚痴になっちゃうなあ。
by greenerworld | 2006-11-16 11:23 | エネルギー