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飼育された希少生物を自然に戻すことの限界

 少々旧聞になってしまうが、11/14の朝日新聞夕刊(東京版)に、養殖マスの母川回帰率がきわめて低いという記事が掲載されていた。簡単に要約すると、サケの仲間スチールヘッド(ニジマスの降海型)は乱獲やダム事業で激減し、養魚場で稚魚を育て放流しているが、遡上したスチールヘッドのDNAを調べたところ、10世代にわたり養魚場で育てられた個体の子魚は天然魚の6〜30%程度しか戻ってきていなかった。

 養魚場という環境で育てられたことで、苛酷な自然の中で生き延びる力や、繁殖力が弱くなってしまったのだろうか。飼育環境に適応してしまった「ひ弱な」養殖魚が天然魚と交配することも問題である。

 この調査結果は、長く継代飼育した生きものを自然に放すこと自体が自然破壊になるおそれがあるということを教えている。その地域にもともといなかった生きもの、同じ生きものでも他地域の個体を放すことはもちろん、その地域にもともといた生きものであっても、長く継代飼育したものを自然に戻すことには問題があるかもしれない。「採って、飼って、増やして、戻す」という保護活動に再考を促すデータである。

 今、人間活動の影響で多くの生きものが絶滅の危機に瀕しているが、その解決方法の一つとして飼育下で繁殖させ、自然に返す(再導入)試みが行われている。わが国でコウノトリ、トキの自然回帰事業が行われているのはご存じの通り。しかし、こうした試みの限界をこの調査結果が示している。減ってから騒いでも遅い。絶滅危機に至らせないことこそが肝要なのだ。

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by greenerworld | 2006-11-22 10:33 | 生物多様性  

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