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友の死

 Tさんの奥さんから電話があった。覚悟はしていたが、そのときが来てしまった。もう一度酒を酌み交わせる日を待っていたが、ついにかなわなかった。

 オゾン層の破壊や地球温暖化問題がそろそろメディアでも取り上げられ始めていた90年ごろ、Tさんは環境問題の深刻さに衝撃を受け、子どもたちにどんな未来を残してやれるのかと危機感を抱き、宝石貴金属貿易会社のやり手営業マンから無謀にも脱サラした。選んだのは全く専門外の自然エネルギーの普及。太陽熱温水器やようやく使われ始めたばかりの太陽光発電システムの設置を手がける事業を始めたのだった。Tさんとはそのころ知り合い、意気投合した。面倒見が良く、そして自然エネルギーへの思いを熱く語る人だった。

 新しい事業は決して平坦な道ではなかったと思う。それでも彼の人柄と熱意、責任感にひかれて顧客が顧客を呼び、彼の手で多くの屋根に温水器と太陽電池が乗った。日本の自然エネルギー普及に果たした彼の功績は、決して小さくない。自然エネルギー事業協同組合理事長としても多忙を極める毎日だった。

 病気がわかったのは昨年秋、末期の食道癌だった。治療に専念し食道癌は直したが、希望が見えたのもつかの間、転移した肝臓癌がTさんの命を奪った。

 わが家の屋根に乗っている温水器と太陽電池もTさんに設置してもらったものだ。この夏は日射が多く、どちらもよく働いてせっせと温水、電気を作り続けてくれている。これからも、作り続けてくれるだろう。そして、湯につかるたび、発電モニターをみるたびに、Tさんを思い出すことだろう。

 この夏の輝く陽光の中で、旅立ったのはいかにもTさんらしい。ごくろうさま。安らかにお眠りください。

 法師蝉鳴き初めし日なり 友永眠(ねむ)る 虫魚
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by greenerworld | 2007-08-15 18:03 | 森羅万象  

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