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水素は地球とカーメーカーを救うか?

 東京モーターショーを控えて、各社から新しいコンセプトカーの発表が相次いでいる。プラグインハイブリッドや電気自動車が話題だが、次世代を見据えた水素エンジンに取り組むメーカーもある。

 水素といえば、数年前には地球を救うとまではやされた燃料電池車は今ひとつ盛り上がらない。実際このところ熱気が冷めてしまった気がする。今回のモーターショーにも、何社かは展示を予定しているようだが、セルの価格や寿命、燃料の水素の供給など解決しなければならない課題が多すぎる。力を入れているメーカーでも、普及は2030年以降と見ている。しかし、燃料電池価格が低下し、耐久性が増したとしても、燃料電池車に実用性はあるのだろうか。

 燃料電池では水素を燃料として、酸素と電気化学的に反応させて電気を取り出す。問題はその水素をどこから持ってくるかだ。デビッド・ストラハンは 天然ガスから改質してつくる限り、エネルギー効率は25.2パーセントに過ぎず、油井(ガス田)から走行まで(ウェル・トゥー・ホィール)の効率でガソリンハイブリッド車より劣る(“The Last Oil Shock”, 2007)、と述べている。天然ガスから水素への改質で2割、水素の運搬のための液化プロセスで3割、燃料タンクへの圧縮充填で1割のエネルギーが失われ、さらに燃料電池による発電で5割が失われるという計算。

 現状では、燃料電池の発電効率は5割以下だから、総合効率はこれよりさらに低くなり、20%がいいところだろう。それでも、エネルギーあたりのCO2排出量で見ると天然ガスはガソリンの4分の3なので、わずかながらも温暖化対策にはなるかもしれない。しかし、救世主ともてはやすほどの大きな差とは思えない。しかも、天然ガスもいずれ枯渇する化石燃料である。

 では、再生可能エネルギーから水素をつくったらどうだろうか。たとえば風力発電や太陽光発電からの電気を使って、水を電気分解し水素を発生させることができる。それならCO2は出さず、クリーンだということになる。水素は発電施設の近くでつくり、その場で圧縮充填するとしよう。つまり、液化はしないのでその分のエネルギーロスは考えない。

 電気分解の際には熱が発生するなどエネルギーの損失があり、少なくとも3割のエネルギーが失われる。圧縮してして充填するところ以降は先の計算と同じである。つまり、投入した電気エネルギーは燃料電池の効率が5割だとして31.5%、4割だとすると25.2%に減少してしまう。それでももちろんCO2を出すわけではない。しかし、燃料電池車は最終的に電気でモーターを回す電気自動車なのだ。こんな回りくどいことをせずに電気を電気としてそのまま使えばいい。バッテリーの充放電によるエネルギー損失を2割と考えたって元の電気の80%が使える。

 遠隔地で水素をつくり液化して運ぶとなれば、さらに効率は悪くなる。電気であればそのまま送電線に流せばいいだけだ。わざわざ水素にしなければならない理由は、ほとんど見あたらない。

 燃料電池は中小規模の定置型熱電併給(コジェネレーション)システムとしては優れていると言えるだろう。しかし、自動車に搭載しても「地球を救う」ことにはなりそうもない。こんな単純な計算も顧みず、国(資源エネルギー庁)は車載用燃料電池開発に大きな予算をつけてきた。

 ところで水素エンジンは燃料電池よりさらにエネルギー効率が悪い。そもそもは加速性能の良さから取り組んだもの、時代錯誤の技術だといわざるを得ない。燃焼しても水しか出さない、というところに眩惑されてはいけません。
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by greenerworld | 2007-10-12 09:21 | エネルギー  

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