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空がかすむ季節──黄砂の効用?

 この季節、晴れても空がかすむ日が多い。霞(かすみ)というのは春の季語で霧は秋の季語だが、どちらも同じ微細な水滴が空気中を漂っている現象をいう。この時期晴れているのに空がかすんでいるのは、霞ではなく大気汚染や花粉、そして黄砂が原因だろう。

 黄砂の正体は大気中を漂う微少な鉱物粒子だ。直径2〜3ミクロン(1ミクロンは千分の1mm)で、学術的には風送ダストという。日本にやってくる黄砂は、主にモンゴルや内モンゴルの乾燥地帯が起源。ここで起きた猛烈な砂塵嵐で上空まで吹き上げられたダストが、ジェット気流に運ばれて日本までやってくる。日本では視界が悪くなったり、車や洗濯物が汚れるといった程度の被害だが、発生源に近い中国や韓国では、大量の黄砂のために視程がほとんどなくなり交通機関に影響が出るどころか、呼吸器障害で死ぬ人もあり、外出もままならない。

 黄砂の一部はハワイや北アメリカにまで達しているという。J.ダイアモンドの『文明の崩壊』を読むと、この黄砂が太平洋上の島々に栄養塩類をもたらし、その生産性に関わっていることが指摘されている。たとえば、文明が崩壊したイースター島までは黄砂はほとんど届いていないのだそうだ。

 黄砂は当然海洋にも降り注ぐので、その海域に栄養をもたらすことになる。大洋の真ん中では陸からの栄養塩類の補給はないので、生物生産性がきわめて低く、降り注ぐ黄砂の恩恵は大きい。黄砂のおかげで植物プランクトンが増殖し、食物連鎖が始まる。この作用は空気中のCO2を取り去ることにもなる。

 さらに黄砂自体には太陽光線をはね返す作用があるが、逆に地表からの赤外線を閉じこめる「温室効果」も持つ。雪や氷の上に降り注げばこれを溶かすので、これも温暖化を促進する。黄砂のもつさまざまな作用をインテグレートすると、温暖化をやや緩和する方向に働くそうだが、まだ詳しいことはわかっていない。

 もう一つ、黄砂は窒素酸化物や硫黄酸化物のようなさまざまな汚染物質も運ぶ。発生地起源の有機物─カビや細菌などの端くれ─も伴っている場合がある。これを吸い込むとアレルギー症状を呈する人もいて「黄砂アレルギー」という言葉も聞かれるようになった。

 日中韓モンゴルによる黄砂の観測態勢は、中国が「国家機密」を楯に情報提供を拒んだため、残念ながら不完全なものになってしまった。気象庁のサイトでは、黄砂の実況と予測が見られるが、観測ポイントが最も多い中国のデータは今のところ空(から)になっている。黄砂の観測は、大気汚染物質の監視にも活かすことができる。汚染対策の観点からも、東アジアにおける協力体制の再構を期待したい。
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by greenerworld | 2008-03-22 10:20 | 環境汚染  

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