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肥料とエネルギーと“ポスト京都”

 チッソ、リン酸、カリといえば、作物の三大栄養素。これらを含む肥料なしでは十分に収穫を上げることができない。もちろんほとんどは「化成肥料」すなわち工業的に合成された肥料である。全農(農協の中央組織)が主要な肥料の販売価格を大幅に値上げすることになり、農家の経営を直撃することが懸念されている。肥料価格の高騰は、資源・エネルギーインフレの大波をまともにかぶった形だが、当然その影には、中国などの食料需要の高まりがある。

 日本はいずれの肥料もほとんどを輸入に頼っている。リン酸やカリは天然鉱石が原料だが、チッソは現在空気中の窒素ガスと水素を使い高圧高温化でアンモニアを合成するハーバー(&ボッシュ)法で製造されている。水素は天然ガスから、高温高圧をつくるためのエネルギー源は石炭や石油。いずれも化石燃料だ。

 自然界では、マメ科植物などに共生する根粒菌が空中の窒素を固定することはよく知られているが、生物的に固定される窒素量は年間1億8000万トンほどだと言われている。そのうち、豆類などの作物やアルファルファなどの牧草によるものが約半分を占める。

 一方でハーバー法により工業的に固定される窒素が、生物的に固定されるのとほぼ同量あると言われている。農耕地以外で自然に固定される窒素の一部は、狩猟採集や天然肥料・自然循環の形で利用されてはいるが、その量はわずかだろう。人類の食料のおそらく6割以上が、化石燃料を使って工業的に合成された窒素によってまかなわれているということになる。このやり方がいずれ限界に突き当たることは想像に難くない。しかも製造過程や施肥後に強力な温室効果ガスであるN2Oも発生する。施肥後に余剰の窒素分が水系や地下水を汚染するという問題もある。おそらく窒素はものすごく無駄に使われているのだ。もちろん、有機質肥料だけでは65億人にふくらんだ人口をまかなえそうにない。

 「地球環境」問題や「地球温暖化」問題の議論は、いかに人類がこの先も持続的に生き延びていけるかという話につながって初めて意味がある。誤解を恐れず言ってしまえば、温暖化そのものはそれほど問題ではないと思っている。重要なのは、今世紀半ばには90億人に達すると予測される人類を養える食とエネルギーがこの先も確保できるのかということだ。現在の地球温暖化の議論は「いかにCO2を減らすか」に収束している。肝心の人類の持続可能性という視点がかすんでしまっているのではないだろうか。肥料のみならず、農業機械・漁船・移送の燃料に至るまで、食が化石燃料によって成り立っていることを考えれば、「ポスト京都」は、ポスト石油、ポスト化石燃料として議論しなければならない。
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by greenerworld | 2008-07-02 08:01 | 環境エネルギー政策  

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