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カテゴリ:環境エネルギー政策( 74 )

 

もんじゅの亡霊が日本を滅ぼす

 およそ1兆円もの国費を費やし、いまなお再稼働の見込みのないまま年間200億円という維持費が注ぎ込まれ続ける、高速増殖実験炉「もんじゅ」。ようやく政府は今月(2016年12月)中に廃炉を正式決定するという。

<内容>

■致命的な事故を起こしたもんじゅ。廃炉で核燃サイクル政策も転換と思いきや

■核燃サイクル政策を廃止すると既存原発も動かせなくなる

■官僚は決して失敗したとはいわない。このままでは泥沼に

■もんじゅの廃炉自体がまだ技術的めど立たず

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「もんじゅ」の全景(出典;Wikimedia Commons, source;Nife's photo)

もんじゅは廃炉にするが高速炉の開発は続けると経産省

 国内の原発(軽水炉)の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出すのは、高速増殖炉で反応させて、また新たなプルトニウム燃料をつくり出すという「夢の核燃料サイクル」のため。もんじゅはその開発のためのフェイズ2にあたる実験炉。このあとに、実証炉があり、次に実用炉(商用炉)がようやく実現する。

 高速増殖炉はいまから60年も前の1956年に、原子力委員会がまとめた計画に基本構想として記載された。61年の「長期計画」では70年代後半に実用化の目標が置かれた。しかし、一向に実現する気配もなく、実用化は80年代後半、90年代、2010年ごろ、2050年と、ずるずる先送りされてきた。

 原型炉である常陽(茨城県大洗市)は71年に着工して77年に初臨界を迎えている。常陽で得られたデータに基づいて建設されたもんじゅは83年着工、94年に臨界に達した。ところが95年暮れに出力を43%に上げたところで、冷却材である溶融ナトリウムの噴出・炎上事故を起こしてしまった。以後一度もまともに運転できないまま、巨額のコストを垂れ流し続けている。

 ナトリウム漏れ事故はこのシステムの根幹に関わる致命的な事故だ。もんじゅが廃炉になれば、当然高速増殖炉を核とする核燃料サイクルは一から見直し、いや廃止になるものだと思っていたが、国(経済産業省)はそうは考えないらしい。

 報道によれば、もんじゅは廃炉にしても高速炉開発は続け、今後10年程度、実証炉の開発作業を進め基本設計を固めるという。

実験炉を飛び越えて実証炉をつくる?

 驚いたのは、次の炉が実証炉だということだ。実験炉のもんじゅはまともに運転データも取れていない。そのもんじゅを飛び越していきなり実証炉の建設に進むのだというのだ。必要なデータは、フランス政府の実証炉ASTRID(アストリッド)との共同研究と、常陽を活用するとしている。そのアストリッドは今まだ影も形もない。計画では2025年に運転開始予定なのだ。普通物事は、失敗したら、失敗したところからやり直すものである。今回であればもんじゅのどこがどう間違っていたのか、その検証を踏まえて、実験炉を作り直すというならまだわかる。それが、もんじゅより前の原型炉・常陽と、9年後にできる予定のフランスの実証炉でデータを集めて、実験炉を飛び越えて実証炉をつくるというんだから、なんだかもう無茶苦茶な話である。

 要するに、国はもんじゅを失敗した実験炉だとは位置づけていない、ということなのだろう。運営主体たる動燃やその後継の日本原子力研究開発機構の組織に問題があっただけで、もんじゅは悪くない、というわけだ。官僚機構につきまとう無謬論である。官僚自身がつくり上げた責任回避の論理だ。

使用済み核燃料で行き詰まる原子力発電

 もし核燃サイクルを放棄すると、使用済み核燃料も行き場を失う。青森県六ヶ所村に建設中の使用済み核燃料の再処理工場は、やはり何度も稼働が先送りされ続けている。その敷地内には各原発から運び込まれた使用済み燃料を保管するプールがあってすでに満杯状態だ。県と六ヶ所村は、核燃サイクルの実施が困難になった場合にはこの使用済み核燃料を施設外に搬出する、との覚書を日本原燃および2016年に設立された使用済燃料再処理機構(実質的に国)と取り交わしている。施設外というが、要するに元の場所(原発)に戻すということだ。各原発にはすでに使用済み核燃料が溜まり続けていて、そこに運び出した使用済み核燃料が戻ってくると、原発を動かしたくても動かせなくなってしまう。このため、東京電力と日本原子力発電は、青森県むつ市に再処理前の使用済み燃料を長期保存する中間貯蔵施設をつくった。関西電力は使用済み核燃料の中間貯蔵施設を2030年ごろに稼働させる計画を発表しているが、場所は決まっていない。

 もう一つ問題がある。もんじゅを廃炉にし核燃サイクルも放棄するとなれば、これまで溜め込んだプルトニウムも宙に浮いてしまうことだ。ウラン燃料にプルトニウムを混ぜたMOX燃料を英仏に再処理を委託して製造しており、既存原発で使うプルサーマルでしのぐつもりだったが、原発の再稼働が遅れに遅れているし、プルサーマルとなればさらに強い反対が巻き起こるだろう。使うあてもないのに大量のプルトニウムを持ち続ければ、当然核拡散防止条約に引っかかってしまう。日本は、その気になれば核兵器に転用できるプルトニウムを持ち続けることで、「潜在的核抑止力」を維持したいと考えているが、核燃サイクルを放棄すればその根拠を失う。次期大統領のトランプ氏が、日本の核武装を容認する発言をしているが、国際的にはとても認められまい。

辻褄合わせの先送りでは問題はさらに深刻化

 国が2006年に策定した「原子力立国計画」では、高速増殖炉の実証炉を2025年に導入としている。福島事故を経て状況が大きく変化しているにもかかわらずこの計画はまだ生きており、いまから実験炉をやり直していたらそれに間に合わない。かくして、もんじゅは失敗ではなく使命を終えたので廃炉にし、その次のフェイズ=実証炉に進む、という結論が導き出される。とにかく既存計画とすりあわせなければ全ての政策の歯車が狂ってしまうのである。しかし、方向も道筋も間違っているので、また早晩矛盾や行き詰まりに突き当たる。だがそのときにはこれまでの担当者の多くは退職しているか少なくとも担当を外れている。そのときの担当者がまた弥縫策を考え、御用学者を使ってお墨付きを与えればいい。こうして無責任な先送りが続く。そのツケを払わされる国民は好い面の皮だ。しかし、それほど遠くない将来、カタストロフに至ることは間違いない。この国の官僚機構の最大の問題点といってもいいと思うのは、この無謬論=無責任先送り体制である。核燃サイクル政策は誤りだった、と認めるところからしか、やり直しはできない。

 ここへ来て廃炉に関して技術的な問題も解決していないことがわかった。ANNの報道によると、冷却材のナトリウムを取り除くめどが全く立っていないのだという。廃炉にどれだけの費用がかかるのかも不透明だが、そもそも廃炉が可能なのかもわからないのだ。それでもまだ、新高速炉の計画を進めるというなら、国民を巻き込んだ玉砕政策という他はない。


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by greenerworld | 2016-12-09 17:32 | 環境エネルギー政策  

電力自由化の陰に見え隠れする原発と大手電力会社の延命

 今回の「電力小売全面自由化」は、単に家庭部門までの電力小売事業が開放されるに留まらず、これまで既存大手電力会社の一部門であった送配電部門が分離されることが大きな改革点だ。その部分に焦点を当てつつ、いくつかの問題を指摘したい。
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 発電から送配電、小売に至る「垂直統合型」の事業形態をもち、地域を分けて事業の独占が認められていた、これまでのいわゆる九電力体制から、九五年にまず発電部門が自由化され、小売部門も二〇〇〇年以降大口から自由化が進められてきた。しかし、送配電部門を既存電力会社が握っているため、電気の配送料である託送料金の設定や電力の受け入れに関しては既存電力側の思惑で決められ、自由な競争を妨げているという批判が絶えなかった。今回は五年後をめどに送配電部門の法的分離を義務づけたうえで、発電部門と小売部門には原則として自由な参入が認められるようになった。既存電力会社も新規参入事業者(新電力)も同じ条件で、託送料金を送配電会社に払い、発電した電気を送り、売ることができる。

 ただ、送配電部門は「別会社」になるだけで、九電力それぞれのグループ内にそのまま留まる。そして送配電部門に関しては地域独占と総括原価方式が維持されることになった。東京電力は四月から既に法的分離を先取りしたかたちで組織改編を行い、送配電部門を「東京電力パワーグリッド」として持株会社「東京電力ホールディングス」の傘下に置いた。他の電力会社もいずれ同様の対応を取ると思われる。東京電力は火力発電部門と小売部門も別会社とした一方、原子力発電部門は福島第一原発事故に伴う賠償・廃炉・復興推進部門とともに持株会社の一部門とした。

 東京電力パワーグリッドはかたちの上では別会社でも、利益は持株会社に合算される一〇〇%子会社、しかも使用済み燃料処理費の一部と、原発の立地対策費や推進PRに使われる電源開発促進税がこの託送料金に上乗せされて全需要家から電力使用量に応じて徴収される。将来的には廃炉費用もここに加わるかもしれない。どこから電気を買おうと原発関連費用がついて回る。

 さらに自由化は既存電力会社を原発再稼働へと向かわせている。稼働開始から四〇年超の老朽原発は原則として廃炉にする「四〇年ルール」も、原子力規制委員会が認めれば延長できる例外規定で骨抜きになった。安全対策を施して稼働延長しても採算の取れない、出力の小さい原発は廃炉を決定するが、大型原発は最大二〇年延長させてめいっぱい稼ぐ目論見だ。一方で燃料費の安い石炭火力の建設計画も目白押しで、自由化による料金値下げ圧力は、なんのことはない原発とCO2排出量の多い石炭への回帰に繋がっているのである。

 その反面、再生可能エネルギーは固定価格買取制度の改定で導入が頭打ち。供給に限りがあり再生可能エネルギーの電気を選びたくとも選べない状況にある。電力を自前で調達できない新電力は卸電力取引所から電力を供給するが、卸取引所に供給余力のあるのも当面は既存電力会社だけ。新電力を選んだつもりが中身は既存電力会社だったということも。

 来年四月には都市ガスの小売全面自由化も控える。送配電分離同様、東京、名古屋、大阪の三大都市圏で「ガス導管分離」も行われる。東京電力、中部電力、関西電力は都市ガスの原料であるLNG(液化天然ガス)輸入の上位を占め、LNG基地も持ち、すでに自由化されている大口部門に参入ずみ。電力自由化のみならず都市ガスを含むエネルギー自由化とそれに伴う業界の再編の中で、大手電力会社を総合エネルギー企業として生き残らせようというのが、経済産業省の思惑なのだろう。
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by greenerworld | 2016-04-16 19:01 | 環境エネルギー政策  

使えるか使えないか、生物多様性保全活動促進法

 1月6日、環境省で開かれた「生物多様性保全活動促進法」の説明会・意見交換会に出席してきた。12月6日付の当ブログで「里地里山法」と紹介した、昨年12月の臨時国会の最後にひっそりと成立した正式名「地域における多様な主体の連携による生物の保全のための活動の促進等に関する法律」という長ったらしい法律だ(法律はたいてい長ったらしい)。

 説明を聞いてわかったことは、まずこの法律は市町村の自発的な取組についての法律であると言うこと。つまり主体は市町村であって、活動団体ではないこと。かつ法律に強制力はないということ。

 対象として考えられるのは、放棄された里地里山の保全活動とか、外来種の駆除とか、希少種の保全とか、あまり当たり障りのないところ。一方で大方の自然保護団体が苦闘している「開発」による生息地・自然環境破壊に対しては、歯止めになりそうもない。それでも、第4条4項で非営利活動法人が市町村に保全活動を行おうとする地域の保全活動計画案作成の提案ができるとあり、同5項で市町村にそれに答える努力義務を課している。これがこの法律の最大の活用可能性か。

 環境省の限界は今に始まったことではないが、自然保護・環境活動団体に対してオープンに意見を聞くというところは評価していい。農水や国交を主務大臣として巻き込むのにも、苦労したことだろう。小さく産んで大きく育てるという視点も大事かと一応納得。年のせいか、最近妙に物わかりがよくなった。

 昨年の生物多様性条約COP10では、愛知ターゲットも合意された。生物多様性国家戦略もこれを受けて2012年に改定される予定だという。その中にはぜひ生物多様性の「No Net Loss(正味の損失なし)」を打ち出してほしい。

 このあと、今年秋の法施行を目指して国は『地域連携保全活動基本方針」を夏ごろを目途に策定する予定だという。このあとその検討会を4回ほど開催する。第1回は1/19。その他意見交換会を全国9地区で開催とのことなので、みなさん是非参加を。
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by greenerworld | 2011-01-07 21:21 | 環境エネルギー政策  

温室効果ガス、Now And Then

 昨年暮れ、環境省が2009年度のわが国の温室効果ガス排出量速報値を公表した。例年なら11月に公表されるものだが、今年はなぜだかこの時期にずれ込んだ。温室効果ガス排出量は90年比▲4.1%。これに京都議定書で認められている森林吸収分3.8%を含めれば▲7.9%と、京都メカニズムによる排出量取引分を含めなくても、京都議定書の目標を達成したことになる。森林吸収はあいまいな取り決めだが、温室効果ガスの削減は2008年以降の景気後退が効いている。こと温暖化対策に関しては「リーマンショック様様」である。もっとも、メタン、代替フロン類3種の、CO2以外の温室効果ガスの大幅な削減の寄与分が大きい。エネルギー起源のCO2は基準年比で1.5%のプラスなので、大きいことは言えないかもしれない。
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      温室効果ガス部門別排出量の推移 出典:環境省発表資料より

 部門別でCO2が大きく減っているのはは産業部門、つまり工場からの排出で、19.9%のマイナス。同様に工業プロセス(主にセメント製造)も30.4%減っている。これに対して業務部門は基準年比では33.6%も伸びている。家庭部門も26.9%の増加。一方、自動車を中心にした運輸部門は5.4%増に。

 もっとも2010年度は09年比で増加することは間違いなさそうで、喜んで? ばかりもいられない。ただ、2010度の増加要因は夏の猛暑とエコポイントによる景気刺激策が大きく、2011年度にこの効果がはげ落ちてくれば、また減る。どっちみち、景気の行方に左右されるのは情けない。

 民主党政権は2013年度に導入を計画していた、キャップアンドトレードの排出権取引制度導入を引っ込めてしまった。先送りという形だが、2013年までには総選挙があり、民主党が負ける公算が高いので、事実上撤回といっていいだろう。有力支持母体が大手企業の労働組合であるだけに、法人税減税と並び、産業界に配慮したものだろう。財界の支持を自民党から奪おうという意味もあるのだろうが小手先の対応である。2020年にマイナス25%という目標もそのうち引っ込めるのではなかろうか。

 産業部門の大幅な減少の理由には、景気低迷の他、この間の産業界の省エネ努力もある。しかし、国内の産業構造は大きく変わった。素材・組立工場は撤退したり、コストの安い海外に出ていったりした。その分は進出先での排出に置き換わったわけだ。製造業の空洞化が進んだ一方、さまざまな業態の小売業が増えた。90年にはコンビニはこれほどまでに街角にあふれていなかったし、大型ショッピングモールやロードサイドの大型小売店舗も少なかった。福祉・介護、IT関連の仕事は急拡大した。この結果、二次産業の就業者数は90年の2,099万人から、09年は1,589万人に減少する一方で、三次産業は3,669万人から4,366万人に増加している。サービス産業化が進展したことが、業務部門の排出量増加の原因とみていいだろう。

 一方家庭部門では、人口はピークを打ったが世帯数の伸びが続いている。基本的な家電製品は世帯単位で保有するので、世帯数が増えればエネルギー消費も増える。この傾向はこの先しばらく続く。温水洗浄便座、食器洗い機、衣類乾燥機、パソコンなども普及した。ただし、これも2015年ごろをピークに減少に転じる可能性がある。世帯数が減り始めるからだ。

 運輸部門の排出量は2001年をピークにして緩やかに下降している。この間乗用車の登録台数は増えており、プリウスが普及したのは最近だ。この10年ほどの間に大きく変わったのは、1700cc以上のクルマが減って燃費のよい軽自動車が増えたこと。さらに平均走行距離も短くなったこと。小さなクルマで、ちょこっと乗るという使い方になってきたわけだ。若者のクルマ離れは、雇用情勢の悪化も原因で、つまり非正規雇用を増やした自動車メーカー自身にも責任がある。しかしそもそも若者の数が減っており、かつてのモータリゼーションを支えた団塊世代は老後を迎えた。都市居住者にとっては、クルマを持つことがコスト高であると同時に、クルマを持たなくても不便がない。こうした変化を背景に見ると、運輸部門は今後も低下していくだろう。

 20年間の温室効果ガス排出量の推移は、それなりにこの間の日本社会の変化を反映している。
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by greenerworld | 2011-01-05 20:36 | 環境エネルギー政策  

ひっそりと国会を通過した「里地・里山法」

 政治とカネ、尖閣、大臣の失言・更迭と混乱の続いた第176回臨時国会は12月3日に幕を閉じた。衆参のねじれと政局の混乱を反映して、法案の成立率はこの20年で最低水準という中、ひっそりと最終日に衆議院で可決され(参院先議)通過した法案がある。「地域における多様な主体の連携による生物の多様性の保全のための活動の促進等に関する法律」という長ったらしい名前であるが、別名を「里地・里山法」というらしい。地域の生物多様性を「地域における多様な主体」が連携して保全していくことによって、現在及び将来の国民の健康で文化的な生活を確保するのが目的である。

 主務大臣(環境大臣)は「地域連携保全活動基本方針」を定め公表しなければならない。また市町村も単独または共同で「地域連携保全活動計画」を策定できる。この主体は特定非営利活動法人等となっており、実際にはNPOの活動を保証するための計画といってよい。なかなか画期的だと思うのは、第四条の4に「地域連携保全活動を行おうとする特定非営利活動法人等は、当該地域連携保全活動を行おうとする地域をその区域に含む市町村に対し、当該地域連携保全活動に係る事項をその内容に含む地域連携保全活動計画の案の作成についての提案をすることができる」(わかりにくい言い回しだね)とある点で、要はNPO側から計画の策定を自治体に働きかけられるということである。もちろん自治体側はそれをはねのけることも可能だが、それにはそれなりの理由を通知する必要がある。

 NPO側がイニシアティブを取って保全を進められる可能性があるわけだ。もちろんNPO側にも相応の知識や活動の蓄積・実績が求められるのは言うまでもないが、使い途によってはなかなか面白い法律と言える。年内公布・来年には施行の予定というので、いましばらく注目してみたい。使えるようなら現在の活動フィールドも……。
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by greenerworld | 2010-12-06 17:04 | 環境エネルギー政策  

太陽熱「仕分け」さる

 昨日のエネルギー特会関連の事業仕分け、ストリーミング中継を見ていなかったので、今日あらためて行政刷新会議のサイトで議事録を読んでみた。まず経産省と環境省の棲み分けのわかりにくさについては、ご指摘の通り。誰にもよくわからない。新エネルギーとなれば経産省だと思うが、省エネは産業政策としては経産省で、環境対策としては環境省。新エネも温暖化対策に結びつけば環境省がやる。元々エネルギー特会は、環境税導入を避けたい経産省が、エネルギー関連税制のグリーン化を持ちかけて、環境省がそれに乗ったかたちで両省の所管となった。経産省は「環境対策として使う分」を環境省に譲り渡した。しかし、彼ら(環境官僚)はこれまでこうしたまとまった事業予算を組んだ経験がないものだから、実に無駄な使い方をしてきたのも確かだ。

 環境省が太陽熱をやっているのも、まあ落ち穂拾いのようなものだ。しかし太陽熱を何とか普及させたいと考えている我が身としては、太陽熱リース事業の仕分け結果(予算計上見送り)には異議がある。太陽光発電はせいぜい10数%のエネルギー変換効率だが、太陽熱は50%ほどになる。給湯(風呂)と暖房合わせると、家庭のエネルギー消費の5割ほどを占めるが、これはせいぜい50℃あればいい低温の熱で、太陽熱のもっとも得意とするところだ。

 これはほとんど国を挙げてといってもいいくらいの勢いで進んでいる「オール電化社会」へのアンチテーゼでもある。90年代半ばの訪販問題などで評価がぼろぼろになったあげく、国もメーカーも予算を太陽光発電にシフト(今太陽光をやっているメーカーのほとんどはかつて太陽熱温水器を売っていた)。そんな中で太陽熱を続けてきた業界は何とか機器やシステムを普及させようと、苦心惨憺してきた。今太陽熱はBL(ベターリビング)認定もあり、品質を始め設置やアフターフォローへの対応も整っている。しかし、市場が縮小してしまった中では規模の効果がなかなか出ず、太陽光の余剰電力高額買取も導入される中で、太陽熱はますます不利な立場に置かれた。リース事業もそうした苦境から出てきたアイデアだ。台数が出ればシステム価格が下がり、補助金なしで離陸できるとの試算があり、その助走を助けるためのまともな事業だったのだ。しかもリース事業はメンテナンス・回収処理がきちんとできる。仕分け会場では環境省側がこれをきちんと説明できたのか。メンテナンス、耐用年数を過ぎた機器の廃棄処理など、かつて太陽熱温水器で問題になったことはこれから太陽光発電で問題になる。そのためにも必要なビジネスモデルだったのだが……。

 ガタガタの民主党政権にとって、事業仕分けは数少ない失地回復の場のようだが、すでに国民の熱は冷め、議員のパフォーマンスとしてもかなりイタい。事業仕分けにも仕分けの必要があるんじゃないの? それとも、オール電化を進めたい電力業界の思惑を受けた仕分けだったのか……。
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by greenerworld | 2010-10-30 10:11 | 環境エネルギー政策  

RE電力全量買取へのハードル

 資源エネルギー庁の総合資源エネルギー調査会・新エネルギー部会内の買取制度小委員会で、(固定価格による)再生可能エネルギーの全量買取制度について検討が行われている。すでに7月の段階で、発電事業用も含めて実用化されている再生可能エネルギーを全て買い取り対象とすること、基本は全量買取だが住宅用太陽光発電は従来どおり余剰電力のみの買取という大枠が出されており、9月以降は詳細面を具体化しながら委員の意見聴取を行う形で進められている。10月20日の第7回委員会は、買取対象と範囲がテーマ。

 まず買取対象については、「実用化されている再生可能エネルギー」として、太陽光、風力(小型を含む)、3万kW以下の中小水力発電、地熱発電、バイオマス発電(他用途での利用に著しい影響のないもの)としたうえで、実証段階にあるものは当面対象としないという考えが示された。洋上風力発電も日本ではいまだ実証段階にあることから、対象から外された。ヨーロッパではすでに普及段階で技術的にも確立されているが、日本では本格的な洋上風力は現在茨城県沖で実証機の設置が計画されているのみ。海洋温度差発電、潮力発電、色素増感型セルによる太陽光発電も対象外。これらは研究開発や実証の支援に重点を置くという。

 住宅用太陽光発電については、現状どおり余剰電力のみの買い取りの方向で、これは省エネインセンティブに配慮したという理由になっている。つまり太陽光発電を設置した家庭は余剰分をより多く売ろうとして節電に努めるという訳だが、全量買取にしたら節電しないという理屈はない。結局は車と同様に耐久消費財として売られている現状、システムが混在して複雑になること、への配慮(誰に対する?)が働いたのだろうか。固定価格買取制度はそもそも再生可能エネルギー発電を「事業として」成り立たせ、導入を促進するためのもの。ブログ子は、個人の住宅の屋根にのっていようとも太陽光発電システムは地域のエネルギーインフラと考える。本来はすっきりと全量買取に一本化すべきだろう。それに黙っていても、「屋根借り」による発電事業を始めようとするものが出てくるだろう。発電事業と個人の設置をどこで線引きするのか。

 小型風力は、買取対象に含まれる方向だが、太陽光と組み合わせた場合、エネファームとの併用同様、“ダブル発電”として現状のように冷遇されることになるのかは、まだ不透明。

 木質バイオマス発電も課題が多い。資源エネルギー庁側でも、製紙や製材などのマテリアル用途と競合しない、森林や生態系の破壊にならない収集・運搬、実質的にCO2の削減になる、などの前提を示しているが、それをどう担保するのか。製紙チップなどでも、海外で違法伐採や大規模森林破壊につながる伐採起源の原料の排除ができていない。違法伐採起源のチップをどう見分けるのか。森林認証のようなしくみを作ったとしても、その検証は難しく、きちんとやればやるほどコストがかかる。まさかICチップを埋め込むわけにもいくまい。当面は、搬出されていない林地残材や切り捨て間伐材に限定することになりそうだが、それでも厳密な「監査」が必要になろう。

 木質バイオマスでもう一つ気になったのは、発電効率の議論がないことだ。木質バイオマス発電は小規模であること、高温蒸気を作るのが難しいことから発電効率が低い。せいぜい20%台の前半がいいところではないか。発電効率に一定の制限を設けないと、せっかくの再生可能資源をむだに使うことになる。むしろ熱と電気のコジェネレーションを条件にすべきだと思う。熱利用が主で、総合効率が7〜8割あれば、発電効率をうるさくいう必要はない。木質バイオマスは本来、低〜中温の熱利用に向いた燃料なのだ。
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by greenerworld | 2010-10-21 09:37 | 未分類  

太陽熱温水器無料撤去!?

 この猛暑も、自然エネルギー利用者にとっては恩恵で、わが家も屋根の真空貯湯型温水器のおかげで、ここ1か月ほどはガスをほとんど使っていないはずだ。もっともこの暑さでは、熱い湯船に浸かる気もしないし温水のシャワーもいらないが……。

 そんななか、郵便受けに一枚のチラシが入っていた。「50名様限定で太陽熱ソーラーを無料撤去」とある。太陽熱温水器が故障したりして不要になった場合、工務店などに頼んで撤去してもらうと最低でも5万円程度かかる。それを無料で撤去してくれるというのだ。

 太陽熱温水器・ソーラーシステム(屋根の上に貯湯槽をもたず、熱交換して地上の貯湯槽に熱をためるタイプ)は、かつて日本の住宅の多くの屋根にのっていた。90年代初めが出荷のピークで、その後は市場がどんどん縮小していった。最近は少し盛り返しているようだが、いまや「ソーラー」と言えば太陽光発電の方で、太陽熱利用はわざわざ「太陽熱ソーラー」と書かないとわからない。

 で、太陽熱温水器・ソーラーシステムの耐用年数は15〜20年とされるから、大量設置時代のものがそろそろ耐用年数を迎えているのだ。実際、伺ってみると「のってはいるけど使っていない。はずすのにお金がかかるから」というお宅は少なくない。太陽熱温水器の“デッドストック”は相当あると思われる。つまり潜在需要は大きい。

 くだんのチラシ、続きがあって、ヒートポンプ給湯器「エコキュート」導入が条件なのだ。つまり新手のオール電化のセールスなのである。効率がよいとはいえエコキュートは電気で作動する。電気を起こすには化石燃料や核燃料を燃やす。発電所ではCO2や核廃棄物が出ている。発電と送電の際のエネルギー損失を考えれば、実態はガス給湯器を使うよりややいい程度でしょう。これに対して太陽熱の方は無尽蔵の太陽エネルギーの4〜5割を熱に変えてくれる。COP(成績係数)で比べるのは意味がないが、あえて言えば、投入エネルギーがほとんどないのだから無限大に等しい(ソーラーシステムの場合にはポンプ作動などに電気を若干使うが、これも小さな太陽電池で作動させられる)。

 日本の家庭のエネルギー需要のうち3分の1強がお風呂の給湯用で、2割以上が暖房用だ(2007年の全国平均。出典:住環境計画研究所編『家庭用エネルギーハンドブック(2009年版)』)。どちらも50℃もあればいい。太陽熱を活用するのに最も適した用途だと言える。適材適所、わざわざ質の高い電気を使う必要はない。

 太陽光発電ばかりがもてはやされ、効率のよい太陽熱利用が隅に追いやられる“オール電化国家”など見たくもない。国や自治体は、太陽熱温水器やソーラーシステムを更新する家庭に、補助金を出すべきではないだろうか。
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by greenerworld | 2010-08-21 11:05 | 環境エネルギー政策  

温対基本法案も廃案に

 賞味期限が切れないうちに参院選を迎えたくて、通常国会は延長なしで閉幕、重要法案のいくつかが審議未了で廃案となった。衆議院を通過して参議院でも環境委員会の採決が済んでいた「地球温暖化対策基本法案」も廃案となった。鳩山前首相が昨年秋の就任早々、国連で温室効果ガスを2020年までに90年比25%削減とぶち上げた。その実現、さらに環境と経済成長の両立に向けて、政権の目玉となる重要法案の一つだった。

 菅首相も再生可能エネルギーの導入推進には熱心なはずだし、環境大臣は小沢鋭仁氏のまま。参議院選挙で民主党が過半数をとれれば、内閣改造もなく、再提出ということになるのだろうが、過半数を割って連立の組み替えということになると、その相手次第である。ただしこの分野ではみんなの党は民主党とスタンスが変わらず、公明党はむしろさらに積極的な政策を打ち出している。どちらと連立しても、若干の修正ぐらいで大枠は変わるまい。大きく負けた時に菅さんが辞任することも考えられるが、今のところはその可能性は少なそうだ。衆議院では環境委員会でも本会議でも短時間であたふたと採決してしまった。再審議では本質的なところをしっかりと議論してもらいたいものである。

 ところで、参院選投開票日の7月11日はFIFAワールドカップの決勝戦、前日が3位決定戦(いずれもキックオフは日本時間午前3時半)なので、もし岡田監督の目標通り日本がセミファイナルに進んでいると、投票日は日本中がお祭り騒ぎになっているかもしれない。投票率が低下しないか。まあ、そんな心配はいらないと思うが……。
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by greenerworld | 2010-06-16 20:14 | 環境エネルギー政策  

EU、温室効果ガスの2020年削減目標を−30%に

 鳩山政権が掲げる2020年に90年比−25%という目標は、目下世界トップクラスだが、その達成は危ぶまれている。一方、EUはこれまで−20%を目標としていた。これを−30%へとさらに強化すると、英Times 紙の電子版が伝えている。記事によると、EUでは温暖化対策に加え、リーマンショック以降の景気後退も手伝って、昨年の排出量はすでに1990年レベルより14%も減っているため、その達成はもはや容易だと考えられている。目標をかさ上げするのは、昨年のコペンハーゲン会議の失敗を受け、他の国々に率先して低炭素社会を築き上げることで前例を示すためと、低迷している炭素取引市場を活性化するためという。ポスト京都の交渉をリードする狙いがある。

 ただし達成には追加的に330億ポンド(4兆3000億円)/年が必要で、独自に導入することはEU域内企業の競争力をそぐおそれがあることから反対も予想される。EU域外の企業がEUに製品を輸出する場合、排出権の購入を義務付ける制度も検討されているようだ。

 折しもギリシャ・ショックを端に発した金融危機のまっただ中、EUの決断はいかに?
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by greenerworld | 2010-05-26 19:18 | 環境エネルギー政策