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カテゴリ:環境汚染( 13 )

 

猛威を振るう中国の大気汚染

 例年早春に眺望を霞ませるものといえば黄砂であったが、ここ数年は大陸からの大気汚染物質(エアロゾル)がその原因となることが多い。今日も快晴にもかかわらず西の空は近くの山も見えないほど霞んでいる(下の図はSPRINTARSによる予測モデル http://sprintars.riam.kyushu-u.ac.jp/index.html)。
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 中国で大気汚染が加速するのは21世紀に入ってからで、急激な経済発展と期を一にしている。この時期日本始め先進国の製造業がこぞって中国進出を進めた。工場や発電所なども排気ガス対策を考えずに大急ぎで建設された。中国北部では平均寿命が5年半短くなるとか、世界の肺癌の36%が中国で発症しているとか、中国の大気汚染による健康影響に関してさまざまなデータが出てきているが、中国での大気汚染がとくにひどくなったのはここ数年で、健康影響が深刻化するのはこれからだと思う。

 大気汚染物質は朝鮮半島や日本列島にも押し寄せ、すでに中国一国だけの問題ではなくなっている。日本でも健康影響だけでなく、酸性雨による影響も今後出てくるだろう。エアロゾルにはPM(粒子状物質)やNOx、SOxだけでなく、水銀も含まれ、食物連鎖を通じて人間に取り込まれるおそれがある。大気汚染が深刻なのは、同じく急発展するインドも同様だ。インドでは裕福な階層は大都市を避けて、汚染の少ない地方に家を建てて住んでいるそうである。不便よりも健康優先ということだろう。インドネシアやヴェトナムのような東南アジアの新興国も後を追いかけている。

 1970年ごろ北欧では酸性雨が深刻化し、森の木々が枯れ、湖の魚が大量死した。その原因が、国境を越えてきた大気汚染物質であったことから、スウェーデンでは一国における公害対策には限界があると考え、国際社会に提案し1972年のストックホルム会議(国連人間環境会議)開催につながった。これが今も10年ごとに開催されている「地球サミット」の嚆矢である。

 果たしてアジアで同じような枠組みをつくることができるのか。早期に公害を経験した日本が主導できる(すべき)分野だと思うが、冷え切って対話すらおぼつかない日中関係を考えると見通しは暗く、しばらくは西方からやってくる汚染大気におののいているしかなさそうだ。中国では大気だけでなく水や土壌の汚染も深刻。環境問題はさまざまな政治対立を超えて協力し合える格好のテーマだと思うのだが、残念ながら日本政府の環境問題への取り組みはこのところ大きく後退しているように見える。
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by greenerworld | 2014-02-25 11:59 | 環境汚染  

アリューシャン列島のホッキョクギツネ激減の原因は?

 アリューシャン列島西部、ロシア領メドヌイ島のホッキョクギツネ亜種が激減している原因は、餌に含まれる水銀による汚染の可能性があるとモスクワ大学の研究者らが報告している。

 同島のホッキョクギツネは海鳥やアザラシの死がいなど、海洋動物にほぼ依存しているという。これらの動物の体内に含まれる水銀が、ホッキョクギツネに何らかの影響(水銀中毒症)をもたらしているかもしれないというのだ。

 水銀の起源は、火山の爆発など天然由来のものが大きいが、最近では化石燃料の燃焼によるものが増えている。たとえば石炭を燃やすと、中に 微量に含まれる水銀蒸気が大気中に放出される。水銀が雨で降り注ぎ、海洋中でメチル態水銀となり、植物プランクトンやベントスに取り込まれ、食物連鎖を通じて濃縮されていく。生態系上位のものほど汚染度が高くなる。ホッキョクギツネはそれを餌にしているのだから、さらに高濃度に汚染されるわけだ。人間でも、海獣類、クジラやイルカ、獣類、マグロなどの海洋生態系の上位にいる動物をよく食べる地域では、体内水銀濃度が高いことがわかっている。

 21世紀に入ってから、中国やインドなどで石炭や重油を燃料にしたボイラー・火力発電が増加している。今後汚染はさらに増すにちがいない。

ソース:http://www.nature.com/news/seafood-diet-killing-arctic-foxes-on-russian-island-1.12953?WT.mc_id=FBK_NatureNews
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by greenerworld | 2013-05-11 11:20 | 環境汚染  

レアアースと中国の環境問題

 世界のレアアース(希土類元素)生産の実に95%以上が中国に独占されている。中国は戦略物質としてレアアースを政治的に利用している、というのが中国にレアアースを頼っている(日本などの)側の言い分。しかし中国は日中間の尖閣諸島でのトラブルが起こる以前から、レアアースの輸出制限(割当量の削減)を表明していた。理由は環境問題への対処だった。

 レアアースは、17種の元素(スカンジウム、イットリウムと15のランタン族元素)の総称である。代表的なネオジムは、モーターや発電機の小型効率化をもたらす強力な永久磁石を作るのに欠かせない。ハイブリッド車も電気自動車も風力発電機にも、ネオジム磁石が使われている。ディスプロシウムはネオジム磁石に少量加えることで性能を高めるほか、光磁気デバイスなどの材料にも使われる。テルビウムは半導体や光デバイス、高輝度照明などに使われる。ハイテク産業、クリーンエネルギー革命の文字通りキーエレメント(カギとなる元素)がレアアースなのだ。それが中国に独占されているわけで、日本をはじめ西側産業諸国は首根っこを押さえられている。

 だが、実はプロメチウムを除き、レアアースそれぞれの地殻中に含まれる総量はそれほど少ないわけではない。ただしレアアース単体やその化合物鉱石としてとれることはなく、鉱物の中にごくわずかに含有されるだけだ。それゆえ「レア」なのである。

 こうした特性ゆえに、レアアースの採掘・精錬には非常に手間とコストがかかる。取り出される物質に比べて大量の廃棄物が発生するし、精錬には強い酸が使われる。1980年代半ばから中国がシェアを伸ばしてきた理由は、人件費の安さと廃棄物や廃液処理にコストをかけない生産方法にあった。流れ込んだ廃土や廃液は農地を使い物にならなくし、生き物の命や飲み水を奪う。中国のレアアース生産は深刻な環境破壊をもたらしてきた。こうした採掘には違法なものも多いが、合法的な採掘であっても環境対策はおざなりだという。

 中国政府にとって、レアアース資源保護の観点からも、違法採掘対策は急務だ。もちろん政治的な意図もあるのだろうが、輸出制限の背景にこうした違法採掘とそれがもたらす環境破壊があることは確かだ。ただしそれが功を奏するかはわからない。密輸出も後を絶たないと言い、輸出禁止措置も実態は一部骨抜きになっている可能性がある。禁輸による価格高騰は、中国のレアメタルマフィアにとって大きなビジネスチャンスだからだ。

 ハイテク産業、クリーンエネルギー産業が一方でこうしたダーティな採掘・精錬、ダーティなビジネスによって支えられていることは知っておく必要があるだろう。20年後には中国のレアアース資源は掘り尽くされ、後には不毛の大地ばかりが残っているかもしれないのだ。
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by greenerworld | 2010-10-25 21:00 | 環境汚染  

禁煙成功のコツ

 10月1日から、たばこ増税で過去最高の値上げ。これを機会にたばこをやめたいと考える方も多いだろう。四半世紀前はスモーカーだったブログ子が、禁煙の秘訣をただ一つ挙げるとすれば、「やめたら1本も吸わないこと」だ。それができないから苦労してるんじゃないかとおっしゃるかもしれないが、ブログ子が最後の禁煙以前に何度か禁煙に失敗したのは、「つい1本吸ってしまった」から。中でも、半年以上禁煙した後で、「これだけ時間がたったのだから1本ぐらい大丈夫だろう」と、旅先でついもらいたばこをしたのが、結局その旅行中にすっかりスモーカーに戻っていたという苦い経験がある。それだけ、たばこ、いやニコチンの魔力は強大だ。言ってみれば「ニコチンに吸わされている」のであって、たばこが嗜好品だなどというのは嘘っぱちです。

 その1年半ほど後で試みた最後の禁煙の離脱症状はきわめて重く、つらかった。こちらが本気で禁煙しようとするとニコチンも本気で襲いかかってくるのだろうか。たばこ依存が薬物中毒であることがよくわかった。1週間たってもイライラや眠気が収まらず、何か助けはないものかと本屋に行き見つけた本のタイトルは、『たばこは5日でやめられる』。今みたいに禁煙外来もニコチンパッチもなく、職場には副流煙が漂っている。それでもやめられたのは「1本吸ってしまったら元の木阿弥」という思いがあったから。そういう意味ではそれまでの挫折が生きた。この先も、何とか死ぬまで禁煙を継続したいものだと思っている。

 それにしても、たった1本吸ってしまったら、自らの意志でなく、健康と高い税金をむしり取られてしまう。こんな薬物が商品として売られているのだ。税収という魔力も相当なものである。
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by greenerworld | 2010-10-02 15:59 | 環境汚染  

原油流出事故でハリケーンが緩和?

 史上最大の原油流出にも役に立ちそうなことがある。夏まで油膜が海面を被い続ければ、海水の蒸発が妨げられるため、ハリケーンの発生が抑えられるかもしれないと、USAToday紙が報じている。ただし風速が毎時40マイル(18m/秒)を超えると、海面がかき回されてほとんど役に立たないようだ。熱帯低気圧の発生域は大西洋上で、メキシコ湾に達するころには熱帯暴風のレベルに達していることが多い。

 まあそんなことが話題になるくらい例年フロリダやメキシコ湾岸はハリケーンに悩まされてきたということで、これまでにも、氷山で冷やすだの、原子爆弾で破壊するだの、海面を被って蒸発を防ぐだの、という話が語られてきたらしい。昨年はかのビル・ゲイツらが申請した、深海の冷海水をポンプアップして海面を冷やすプロジェクトのアイデアについて特許が公開されたとのこと。そんなところにまた海底油田の掘削井が林立しているわけである。
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by greenerworld | 2010-05-06 14:51 | 環境汚染  

史上最悪の原油流出

 『タイタニック』、『アバター』のジェームス・キャメロン監督が、1989年に発表した作品『アビス』は、興行的にはぱっとしなかったが、当時としては先進的な映像技術を使い、深海に住む地球外生命との出会いを神秘的に描いた。舞台はメキシコ湾で深海の油田探査にあたる、海底油田探査基地「ディープ・コア」だ。東西冷戦が終わりを告げようとしていた時代、米ソの衝突の危機を縦糸にした反戦映画でもあり、軍人たちの描き方は『アバター』に共通するところがある。

 そのディープ・コアさながらに、メキシコ湾の2000mを超える深海の油田掘削を行っていたのが「ディープウォーター・ホライズン」。もっとも、こちらは本体は海上にあり、長いドリルを深海底に突き刺して掘削する。BPにリースされ、ミシシッピ河口はるか沖の鉱区で掘削にあたっていた4月20日に爆発事故を起こし、11名の犠牲者を出した上、その二日後には沈んでしまった。

 それだけではない。コーストガードによれば、すでに事故以来6百万リットルもの原油が油井から流出し、海上を漂っている。さらに一日当たり80万リットルが加わり続ける。このまま流出が続けば、89年にアラスカで起きたエクソンバルディーズ号事故を上回る、史上最悪の原油流出事故になるおそれがあるという。メキシコ湾の生態系、漁業、景観にも深刻な被害が予想されている。

 シティグループの試算では、処理には125億ドル(1兆1,750億円)もの莫大なコストを要するという。うち、BPの負担は80億ドル(7,520億円)に及ぶ。同社の株価は急落する一方、原油価格は上昇し始めた。

 『アビス』では、最後に巨大な宇宙船が主人公とともにディープ・コアを海上に持ち上げ救い出すが、今回の原油流出は人類の力だけで何とかしなければならない。石油文明の負のコストはあまりにも大きい。
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by greenerworld | 2010-05-02 18:22 | 環境汚染  

太地町の住民毛髪に高濃度の水銀

 数年前に、散髪したときの毛髪をひとつかみほど持って帰った。検査機関に送って金属などが含まれる量を調べてもらうためだ。特に水銀は毛髪にたまりやすく、体内の水銀濃度を反映しているとされ、汚染度・健康への影響の目安となる。

 水俣病の原因となったのが、チッソが垂れ流した廃液に高濃度に含まれる有機水銀であり、日常的に食べている魚介類を通じて人間が水銀を取り込み、発症したのだった。水銀は食物連鎖を通じて、生態系上位の動物体内に蓄積していく。日常的に摂取を続け、長生きする動物ほど水銀濃度は高まる。ある一定の濃度を超すと、影響が出てくる。特に脳神経細胞が冒される。最も重篤な中毒症状がハンター・ラッセル症候群である。また、胎児期に水銀の影響を受けると、神経の発達異常によって、心身障害となることがある。

 その時のブログ子の検査結果は3.8ppmであった。ちなみに日本人男性の毛髪水銀濃度の平均は、2.55ppm。50ppm以下であれば、健康への影響は少ないとされているが、妊婦の場合、毛髪水銀濃度が10ppmを超えると胎児の神経発達に影響を及ぼす可能性があるという報告もある。

 さて、クジラの町であり、ドキュメンタリー映画「The Cove」の舞台である和歌山県太地町で、住民の毛髪水銀濃度が日本人平均の10倍と高かったことが北海道医療大と第一薬科大のグループによる調査で判明したと、共同通信が報じている。太地の住民は、伝統的にゴンドウクジラなどのクジラ・イルカ類をよく食べる。その肉に高濃度に含まれる水銀が原因ではないかという。男性の平均で21.6ppmなので、中には50ppmを超える人もいたのかもしれない。女性の平均でも11.9ppmだったそうで、胎児への影響が出かねない濃度だ。

 元の水銀は火山の噴火でも放出されるが、いまでは自然由来のものより人工由来の方が何倍も多い。さまざまな工業製品にも使われるし、工業プロセスでも使われる。かつては農薬にも使われ大量にばらまかれた。石炭にも含まれているので、火力発電所からは水銀蒸気が立ち上っている。蛍光灯にも水銀蒸気が封入されている……。

 これらの水銀がめぐりめぐって生物のからだに取り込まれていく。その最後の行き着く先が人間だ。人間は生態系の最上位にいて、しかも長生きだ。水銀だけでなく、その他の重金属、ダイオキシンなども食物連鎖を通じて、地球上をめぐり、人間にたどり着く。クジラやイルカ以外で汚染度の高いのは、カジキやマグロ、キンメダイなど。高級魚が多いので、ブログ子としては安心。表層を泳いでいて寿命が短い魚なら水銀の汚染度は少ない。イワシやアジやサバやサンマなどです。

 これから出産を考えている方は、こちらをチェック。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/051102-1-02.pdf
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by greenerworld | 2010-01-22 09:11 | 環境汚染  

タバコにやさしい国

 大学時代の同期で集まろうという話になり店をさがして気がついたのは、ほとんどの居酒屋が「喫煙可」で分煙もしていないということ。たばこ規制枠組条約も批准し、健康増進法も飲食店での受動喫煙を防ぐ措置を講ずるよう求めているが、全く無視されている。成人の喫煙率は男性でも4割を割っているし、女性は10%程度。さらに未成年も考えれば、喫煙者の方がマイノリティである。「全面禁煙」にしてしまった方が、かえって客が増えるのではないかと思うが、どうなのだろうか。結局喫煙者は我慢できないが、非喫煙者は我慢(忍耐)できると考えているわけで、日本は先進国では希な「タバコにやさしい国」である。

 それでも、神奈川県が中身はだいぶ後退したとはいえ、店舗面積100㎡以上の飲食店での分煙または完全禁煙を定めた条例を成立させた。JRも4月1日から首都圏の主要駅は全面禁煙になった。

 山手線か京浜東北線で、東京駅と浜松町駅の間を移動することがよくある。浜松町駅では東京寄りの改札を利用するため、最後尾の車両に乗る。東京駅と有楽町駅では、ちょうどその前に喫煙所があった。車内にも煙が流れてくるし、ギリギリまで喫煙していたスモーカーが車両に飛び乗って煙を吐く。これがなくなっただけでもありがたいが、スモーカーたちはどうしているのだろうか。全面禁煙になった4月1日の夜、東京駅のホームの喫煙所のあったあたりで手持ちぶさた風にたたずんでいた人を何人か見かけたが、そばに警備員が立っていた……。

 喫煙習慣は完全に薬物依存症である。よく喫煙者が「タバコを吸うと落ち着く」、「タバコを吸うと考えがまとまる」などというのは、禁断症状でイライラし考えがまとまらなくなっているからで、ニコチン依存症でない人は別にタバコを吸わなくたって落ち着くし考えがまとまる。かつてブログ子もスモーカーで、禁煙にはえらく苦労した経験がある。タバコと決別してみるとそれまでいわれていたタバコの効能がいかにまやかしかよくわかった。非喫煙者に嫌われ、部屋の壁やカーテンを煙やヤニで汚し、服やじゅうたんに焼けこげをつくって(最悪の場合は火事を出して)、挙げ句病気になる。それがわかっていながらやめられないのは、ニコチン依存症だからである。

 喫煙者も被害者なのだ。多くの喫煙者が、できればタバコをやめたいと考えている。その気持ちを後押しするような政策を打ち出せないものだろうか。たばこ税を上げ、その税収を禁煙プログラムに使う。町のたばこ屋さんの転業を支援する。タスポは結局、タバコの売上をコンビニにシフトさせただけ。コンビニのカウンターの後方にずらりと並んだタバコを見ると、コンビニをよく利用する中高生たちへの悪影響を懸念してしまう。
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by greenerworld | 2009-04-03 17:11 | 環境汚染  

空がかすむ季節──黄砂の効用?

 この季節、晴れても空がかすむ日が多い。霞(かすみ)というのは春の季語で霧は秋の季語だが、どちらも同じ微細な水滴が空気中を漂っている現象をいう。この時期晴れているのに空がかすんでいるのは、霞ではなく大気汚染や花粉、そして黄砂が原因だろう。

 黄砂の正体は大気中を漂う微少な鉱物粒子だ。直径2〜3ミクロン(1ミクロンは千分の1mm)で、学術的には風送ダストという。日本にやってくる黄砂は、主にモンゴルや内モンゴルの乾燥地帯が起源。ここで起きた猛烈な砂塵嵐で上空まで吹き上げられたダストが、ジェット気流に運ばれて日本までやってくる。日本では視界が悪くなったり、車や洗濯物が汚れるといった程度の被害だが、発生源に近い中国や韓国では、大量の黄砂のために視程がほとんどなくなり交通機関に影響が出るどころか、呼吸器障害で死ぬ人もあり、外出もままならない。

 黄砂の一部はハワイや北アメリカにまで達しているという。J.ダイアモンドの『文明の崩壊』を読むと、この黄砂が太平洋上の島々に栄養塩類をもたらし、その生産性に関わっていることが指摘されている。たとえば、文明が崩壊したイースター島までは黄砂はほとんど届いていないのだそうだ。

 黄砂は当然海洋にも降り注ぐので、その海域に栄養をもたらすことになる。大洋の真ん中では陸からの栄養塩類の補給はないので、生物生産性がきわめて低く、降り注ぐ黄砂の恩恵は大きい。黄砂のおかげで植物プランクトンが増殖し、食物連鎖が始まる。この作用は空気中のCO2を取り去ることにもなる。

 さらに黄砂自体には太陽光線をはね返す作用があるが、逆に地表からの赤外線を閉じこめる「温室効果」も持つ。雪や氷の上に降り注げばこれを溶かすので、これも温暖化を促進する。黄砂のもつさまざまな作用をインテグレートすると、温暖化をやや緩和する方向に働くそうだが、まだ詳しいことはわかっていない。

 もう一つ、黄砂は窒素酸化物や硫黄酸化物のようなさまざまな汚染物質も運ぶ。発生地起源の有機物─カビや細菌などの端くれ─も伴っている場合がある。これを吸い込むとアレルギー症状を呈する人もいて「黄砂アレルギー」という言葉も聞かれるようになった。

 日中韓モンゴルによる黄砂の観測態勢は、中国が「国家機密」を楯に情報提供を拒んだため、残念ながら不完全なものになってしまった。気象庁のサイトでは、黄砂の実況と予測が見られるが、観測ポイントが最も多い中国のデータは今のところ空(から)になっている。黄砂の観測は、大気汚染物質の監視にも活かすことができる。汚染対策の観点からも、東アジアにおける協力体制の再構を期待したい。
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by greenerworld | 2008-03-22 10:20 | 環境汚染  

黒海で深刻な原油汚染

 日本ではほとんど報道されていないようだが、黒海で石油タンカーが座礁し、大量の原油がもれ出している。先週北海北部を襲った嵐に、アゾフ海と黒海をつなぐケルチ海峡を航行中の10隻の船が巻き込まれ、難破または沈没した。そのうち座礁したロシアタンカーヴォルガネフト139は、船体が二つに折れ、少なくとも1,300 トンの石油を流出させた。アゾフ海は非常に浅い内海で(規模は違うが日本でいうとサロマ湖や浜名湖、宍道湖・中海のような感じ)、生物多様性に富んだ海域。海面を覆う油分だけでなく、重質成分が海底に沈めば長期的に生態系に与える影響は計り知れないという。アゾフ海、ケルチ海峡は、ボルガ・ドン運河によって油田地帯のカスピ海とつながっている。ボルガ川をさかのぼればロシアの多くの都市、さらにバルト海まで結ばれている海運の要衝でもある。

 英紙ガーディアンの写真ニュースには、大量の黒い油の固まりが漂着する海岸や、油まみれで死んだ海鳥の写真が掲載されている。
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by greenerworld | 2007-11-14 23:46 | 環境汚染