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カテゴリ:生物多様性( 55 )

 

世界の家畜品種の20%が絶滅の危機に

f0030644_9532485.jpg 牛・豚・鶏など、われわれに肉やミルク、卵、皮革や繊維を供給し、生活にも農業にもなくてはならない家畜・家きん。世界食糧機関(FAO)の遺伝子資源データベースには世界中で7600種の家畜・家きん品種が登録されている。ところがFAOのレポート「世界の動物遺伝子資源の現状」によれば、そのうちの190種は過去15年間に姿を消し、さらに1500種が絶滅の危機に瀕しているという。

 家畜・家きんは世界中で10億人の人々の生計を支えており、農村で暮らす貧困層の70%が家畜・家きんに生計の多くをゆだねている。

 伝統的な農村地域の生産様式では、食糧から使役に至るまで多くの目的に利用できる家畜を必要とする。これに対し、近代的な農業は(ミルクならミルク、肉なら肉といった)特定の用途に特化した品種を開発し、生産性を高めている。

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by greenerworld | 2006-12-17 09:54 | 生物多様性  

飼育された希少生物を自然に戻すことの限界

 少々旧聞になってしまうが、11/14の朝日新聞夕刊(東京版)に、養殖マスの母川回帰率がきわめて低いという記事が掲載されていた。簡単に要約すると、サケの仲間スチールヘッド(ニジマスの降海型)は乱獲やダム事業で激減し、養魚場で稚魚を育て放流しているが、遡上したスチールヘッドのDNAを調べたところ、10世代にわたり養魚場で育てられた個体の子魚は天然魚の6〜30%程度しか戻ってきていなかった。

 養魚場という環境で育てられたことで、苛酷な自然の中で生き延びる力や、繁殖力が弱くなってしまったのだろうか。飼育環境に適応してしまった「ひ弱な」養殖魚が天然魚と交配することも問題である。

 この調査結果は、長く継代飼育した生きものを自然に放すこと自体が自然破壊になるおそれがあるということを教えている。その地域にもともといなかった生きもの、同じ生きものでも他地域の個体を放すことはもちろん、その地域にもともといた生きものであっても、長く継代飼育したものを自然に戻すことには問題があるかもしれない。「採って、飼って、増やして、戻す」という保護活動に再考を促すデータである。

 今、人間活動の影響で多くの生きものが絶滅の危機に瀕しているが、その解決方法の一つとして飼育下で繁殖させ、自然に返す(再導入)試みが行われている。わが国でコウノトリ、トキの自然回帰事業が行われているのはご存じの通り。しかし、こうした試みの限界をこの調査結果が示している。減ってから騒いでも遅い。絶滅危機に至らせないことこそが肝要なのだ。

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by greenerworld | 2006-11-22 10:33 | 生物多様性  

人類は地球の再生能力を超えて消費している

 WWF(世界自然保護基金)の「生命の惑星レポート(Living Planet Report)」2006年版の報告は深刻な内容だ。2003年の世界人口一人あたりが使っている地球上の生産面積(エコロジカルフットプリント)は2.2グローバルヘクタール。この値は一人の消費する資源の生産および排出する廃棄物の処理に生態系がどれだけの面積を必要としているかを表している。この合計を地球が提供できる生産・処理面積で割った指標は1.25。つまりわれわれ人類は地球の生産・処理能力の1.25倍もの消費をしている。エコロジカルフットプリントは1980年代半ばに1.0を超え、以後ずっと上昇し続けている。その増加の勢いは衰えない。われわれは地球のストックを急速に消耗させていることになる。

 もし家計なら、毎年の収入に加えて預貯金を取り崩していることになる(他の「星」から借金はできないから)。企業なら大きな赤字を毎年垂れ流し続けているということだ。ストックの大きさがどれほどあるのか正確にはわからないが、この場合は預貯金や資本金と異なり、生きている生物種や生態系、あるいは化石資源ということになる。つまり地球のバイオマス総量。やっかいなのは、これらが相互に関係を持っていてこそ、地球全体の生産力が成り立っているということだ。どこかで崩壊が起こると連鎖的に生産力が低下し、ストックが劇的に枯渇するおそれが強い。いやすでにその段階に入ってしまった可能性がある(刺身が食べられなくなる─世界の水産資源は2048年までに崩壊参照)。

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by greenerworld | 2006-11-15 18:23 | 生物多様性  

刺身が食べられなくなる─世界の水産資源は2048年までに崩壊

 過剰な漁獲、沿岸開発、汚染物質の排出により、人類は海洋と海洋生態系を痛めつけてきた。果たしてこの先いつまでわれわれは海洋を食料の供給源や汚染の排出先(陸上や大気中に放出させた汚染物質も多くはやがて海にたどり着く)として、頼り続けることができるのだろうか。どうやら枯渇が近づいているのは石油ばかりではないようだ。

 米科学誌『Science』の11月3日号に掲載されたカナダのB. Wormらの論文は悲観的だ。彼らの研究によれば、魚類を始めとする海洋生物種とその数は急激に減少しつつあり、2048年までに商業利用されている水産資源が全世界的に崩壊するだろうと予測された。つまり、マグロの刺身も、サーモンステーキも、カニやエビも、食べられなくなるというのだ。

 彼らは50年以上にわたる5億以上の世界中の漁獲記録を分析した。その結果、沿岸における生物多様性の低下、水質の悪化、有害藻類の大発生、沿岸における洪水の発生、魚の死滅が起こっており、1950年に利用できた水産資源の29%が2003年までに崩壊したという。そして、2048年までに残りの全ても崩壊するというのだ。

 こうした海洋の生産性低下は、必ずしも過剰な漁獲が原因とは限らない。たとえば耕地にまかれた化学肥料や農薬が流れ出し、閉鎖的な海域を汚染したり、富栄養化させることも原因となる。底生生物やプランクトンが死滅し、水質を保ち酸素を供給する機能が失われることもある。沿岸の開発で藻場やサンゴ礁が失われることも原因の一つだろう。これらが連鎖的な作用となって、より大きな魚類の減少を招き、そこに過剰な漁業の圧力が加わり、生態系の崩壊を招く。行き着く先はもちろん、人類の経済・社会の崩壊だ。

 しかし、まだこの傾向を逆転させる時間はある、と研究者たちは言っている。保全海域の設定、持続的な漁業経営、海洋汚染のコントロールをすることで、全面的な崩壊を防ぐ手だてをすべきだという。気候変動もマイナス要因であり、これを食い止める努力も必要だ。

 Source:Boris Worm et al. ; Impacts of Biodiversity Loss on Ocean Ecosystem Services, Science Vol. 314, 3 Nov. 2006

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by greenerworld | 2006-11-03 16:45 | 生物多様性  

鴨川の棚田

f0030644_23343817.jpg 大山の千枚田で有名な千葉県鴨川市の大山地区。同じ地区内にある無農薬かつ人力のみで耕作されているという棚田を見せていただいた。稲刈りは終わっているのだが、ひこばえが伸び、昨夜の雨がだいぶたまっているので、初夏の田んぼのようにも見える。耕作者は、棚田の所有者から借りて米作りをしているという。人力だけによる米作りはさすがにきつい。田起こし、田の草取り、あぜの草刈りなど、機械を使ってやるようなわけにはいかないようで、近くのプロ農家の田んぼに比べると、地面の不均等や雑草が目立つし、水のはけも悪い。

 田んぼにはタコノアシやシロバナサクラタデなど、きっちり耕作している水田にはあまりみられない湿地性の植物が見られた。人力による自然に対する「ゆるやかさ」が、田んぼの生物多様性を高めているのかもしれない。草むらのニホンアカガエルはもうだいぶ腹が大きかった。

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by greenerworld | 2006-10-24 23:47 | 生物多様性