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如月の望月に桜は咲いたか?

 西行の有名な歌「願わくは花の下にて春死なむ その如月の望月のころ」について、以前から腑に落ちなかった。この場合の花は桜だと解説にはあるが、如月(旧暦2月)の望月(15日)に桜というのがピンと来ないのである。

 旧暦カレンダーで何年分か調べてみたが、如月の望月は新暦だと3月初旬から4月あたまになる。西行の時代(平安時代末期)にこの季節桜が咲いていたのだろうか。現在の桜の主流ソメイヨシノは江戸時代に作られた品種で、当時桜と言えばヤマザクラだったはずだ。するとソメイヨシノより開花は少し遅い。満開になるのは4月中~下旬ではなかろうか。

 ということで、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書で、過去の気温変化(気候変動)を見てみた。すると、西暦900年~1200年ごろは気候温暖期にあたっているのだ。これで謎が解けたかと思ったが、それでも温暖化が進む現在に比べるとだいぶ低いのである。そうか、これはヤマザクラではなくヒガンザクラではあるまいか。そういえばエドヒガン(名前は江戸だが栽培種でなく野生種)は長寿で各地で桜の銘木となっている。であれば、年によっては如月の望月に満開のこともあったかもしれない。しかし、時節も寒暖も年によってずれるから、西行の歌にはその巡り合わせを望む(如月の望月に花が咲き誇る年、その花の下で死にたいものだという)思いも込められているのだろう。

 さて西行はほぼ歌の通り、1190年の2月16日(旧暦)に72歳でこの世を去っている。新暦では3月23日にあたる。果たして西行は花の下で死ぬことができただろうか。

 ちなみに今年の如月の望月は3月11日。いかに温暖化・都市化が進んだとはいえ、まだ桜の花には早いだろうね。

by greenerworld | 2009-02-12 10:52 | 花鳥風月  

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