クニマスにとって幸か不幸か?
2010年 12月 22日
絶滅種・絶滅危惧種を記載したレッドリストは当然見直しされることになるが、どのカテゴリーに位置づけられるのか。環境省のレッドリストカテゴリーの定義では、野生絶滅を「過去に我が国に生息したことが確認されており、 飼育・栽培下では存続しているが、我が国にお いて野生ではすでに絶滅したと考えられる種」としている。この定義に従うと、西湖では野生状態で繁殖しているので、野生絶滅ではなくその下の絶滅危惧のようにも思える。そこで、レッドリストの元になっているIUCN(国際自然保護連合)の基準を調べると、野生絶滅は「栽培・飼育下または過去の生息範囲の外での移植個体群でしか生き残っていない場合」としている(2001 IUCN Red List Categories and Criteria version 3.1)。こちらに従えば「野生絶滅」ということになる。絶滅したはずのトキを中国から譲り受けた個体群が飼育下あるからと、野生絶滅に位置づけている環境省はどういう判定を下すのか。いずれにしても西湖では「外来種」であり自然分布ではない。クニマスを原産地から絶滅させてしまったという事実を帳消しにするような美談ではなかろう。
早速、原産地の田沢湖にクニマスを戻そうとする動きも出てきた。これも地域振興に絡めて。トキやコウノトリでの地域活性化にあやかろうとするものだろう。またこの話題がひとしきりメディアを賑わし、クニマス詣でも増えることだろう。絶滅種が遠く離れた場所とは言え生き残っていて再発見されたのは喜ばしいことだというべきだろうが、クニマスにとっては、そのまま誰にも知られずに西湖でひっそりと生きていた方が、幸せだったかもしれないなと、思ってしまう。ほっといてくれればよかったのにと、さかなクンを恨んでいるかもしれません。
by greenerworld | 2010-12-22 10:19 | 生物多様性