国は同心円状の線引きを見直し、汚染地域の支援を
2011年 04月 03日
一方で、30kmの圏内であっても、西部や南部ではそれほど高い値が観測されていないところもあります。県の観測ポストの限られた数値からも、汚染が同心円状に広がっているのではないことが明らかですし、それは3月23日に発表されたSPEEDIのシミュレーションにも示されています。
短〜中期的に住民の被ばくを最小限に抑えること、さらに今後の地域の復興・再生を考えた時に、必要なのは汚染状況に合わせたきめ細かな対応・対策です。そのためには空間線量率だけでなく、土壌中のヨード、セシウムなどの放射性核種の量も含め、汚染の実態を詳細に把握することが欠かせません。ところが飯舘に関しては県が土壌のサンプリングを行いその結果が国に渡っているにもかかわらず、いまだに公表されていません。30日のIAEAの独自サンプリングデータやそれに基づく助言については、原子力安全・保安院はそれを否定するようなコメントすら出しています。自ら引いた「線引き」の正当性を守るために、官僚たちがあえて不都合なデータを握りつぶそうとしているようにすら思えます。
かつて原発立地地域では事故を想定した避難訓練すらタブーだったことを思い出します。安全神話を揺らがせてはならないからです。原発事故は「想定外」であったため、国すらも大規模な事故におけるマニュアルを持たず、いたずらに初期の線引きに固執しています。線引きからはずれた地域は支援の確約もなく、一方で住民の健康や安全の確保と復興に取り組まなければならない。いまや一自治体の首長の判断範囲を超えています。いたずらに安全を振りまくのではなく、一刻も早く、政治=官邸がリーダーシップをとって、線引きの見直しと支援を決断すべきです。そのうえで、汚染度に応じたリスクとそのリスクを軽減する対策を示し、住民が判断できる材料を提示すべきです。
津波被災地と異なり、現地には見た目は何も変わらぬ風景が広がっていました。路傍に咲くオオイヌノフグリの花が、春の訪れを告げていました。その可憐な青い花を見て、涙を禁じ得ませんでした。放射能、放射線は目にも見えないし、臭いもありません。それが原発災害の恐ろしさです。原発被災地にこれ以上「罪無き罰」を課してはなりません。
by greenerworld | 2011-04-03 16:02 | 3.11後の世界