遅い春から夏へ─飯舘村の自然
2011年 06月 07日

前回と今回の訪問では、小宮地区にある「いいたてふぁーむ」に泊めていただいた。ここはより福島第一原発に近く、まだ空間線量が高い。標高は500mくらいで、生き物の世界は春と初夏がいっぺんに訪れているという感じである。ウグイスとホトトギスの鳴き声で目覚め、外に出るとひらひらと飛んでいたのはウスバシロチョウだった(写真上)。東京郊外の山地ではゴールデンウィークのころに見られるので、ちょうど一月遅い。今年は見逃していたウスバシロチョウがここで見られるとは思わなかった。庭にはハナショウブとサクラソウが並んで咲き、梅の実はまだ小さかった。
いつもの年なら、山あいの田んぼには水があふれ、少し心細げな早苗が風に揺れている時期だろう。しかし、今年は田植えができず、荒起こしのまま雑草が生えだしている。畦畔の斜面に取り付いて草を刈る人を何人か見かけた。たとえ放射能があっても、草を生やしたままにはしておけないのが農家の心情だ。
いいたてふぁーむのIさんは「生き物のために」と休作する田んぼに水を張った。あぜではシュレーゲルアオガエルがコロコロコロ・・・と鳴き交わしていた。このカエルは田んぼに水が入るとやってきて、水際の土の中に泡に包まれた卵を産む。穴の中にいるので声はすれども姿は見えない。オタマジャクシは孵ると水の中に落ち、育つ。そろそろモリアオガエルも産卵に来るという。
林にはヤマボウシの白い花が目立つ。遅い春から一足飛びに山滴る夏へと、季節はめぐっていく。しかし人の営みがそこから消えている。ひっそりとした村を走るパトロールカーには「三重県警」の文字があった。
by greenerworld | 2011-06-07 08:11 | 3.11後の世界

