ガソリン代替燃料──本命はバイオブタノールか?
2006年 07月 26日
メタノール CH3-OH
エタノール CH3-CH2-OH
ブタノール CH3-CH2-CH2-CH2-OH
エタノールとブタノールの間に炭素を3つ持つプロパノールがあるが、ここで話題にするのはブタノール、バイオマスからつくるバイオブタノールである。
メタノールは通常、合成ガスから触媒を介してつくる。合成ガスは石油、石炭、天然ガス、バイオマスなどを熱分解して得られる水素と一酸化炭素の混成ガスで、さまざまな化学工業の一次原料になる。
エタノールは化学的に合成することもできるが、酵母という優秀な働き手がいるので、これを使った発酵によって糖から得る方法が一般に用いられている。
炭素を4つ持つブタノールは、化学合成と発酵のどちらの方法によっても得ることができる。後者は、「アセトン・ブタノール発酵」として知られている。クリストリジウム属のバクテリアによる嫌気性発酵によって、糖からブタノールとアセトン、若干のエタノールが得られるのだ。これを精製してブタノールを取り出す。
エタノールと比べたブタノールの利点は次のようなものである。
●エタノールと比べ水との親和性が低い。
●エタノールより30%も発熱量が高くガソリンとほぼ同じ。
●ガソリンやエタノールより揮発性が低い。
●輸送に関してパイプラインなどガソリンのインフラがそのまま使える。
●既存のガソリンエンジンがそのまま使える。
エタノールと比べて扱いやすく、発熱量も高いといった利点から見ると、ガソリンの代替燃料としてブタノールは理想的とも言える。しかもガソリンとは0〜100%まで、どのような比率で混ぜても、エンジンの改良なしで使えるという。
セルロースを糖化してブタノールを製造することも当然可能である。先月、イギリスの石油メジャーBPとアメリカの化学メーカーデュポンが共同でバイオブタノールの生産に取りかかると発表した。燃料供給の雄とバイオケミカルの巨人がタッグを組んだわけだ。ブリティッシュシュガーのエタノール製造プラントをブタノールに振り向け、2007年にはイギリス市場向けに生産を開始する計画だという。さらにより大規模なブタノールプラントも計画中。将来的にはセルロースブタノールも視野に入っているようだ。なお、精製工程より前は発酵に使う微生物の違いだけで、エタノールプラントはブタノール生産にほぼそのまま使えるというメリットもある。
どうも本命はブタノールなのかもしれないという気がしてきた。エタノールもごく一部の国以外には普及しておらず、ブタノールは数歩遅れているだけといったところである。シェルはカナダのバイオジェン(セルロースエタノール用酵素の製造メーカー)に出資しているが、バイオジェンの技術はブタノールにも使える。ブタノールであれば自動車側の対応も基本的に不要であり、自動車メーカーはそれを見越してエタノール対応を進めるのか否か。ブタノールをめぐるこれからの動向に注目したい。
しかし、いずれにせよ先進国、グローバル企業によって技術や市場が独占されることは避けたい。もちろん燃料消費の削減が最優先事項である。自動車メーカーにはその分野で努力してもらいたいと思う。
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by greenerworld | 2006-07-26 00:04 | エネルギー