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再生可能エネルギー政策で日本は世界の仲間はずれ

 再生可能エネルギー(自然エネルギー)は、化石エネルギーや原子力エネルギーのような既存エネルギーに対して割高である。もちろん、これは既存エネルギーの資源確保のために投入される資金、電源立地対策や廃棄物・廃炉処理といったコストが含まれていないので、再生可能エネルギー側にとっては不公平きわまりない計算根拠なのだが、現実にその「割高さ」(あるいは既存エネルギーの不当な安さ?)が理由となって普及が進まない。とくに導入初期においてはなおさらだ。

 それを補う政策がいくつかある。一つは環境を汚染する既存エネルギーに対してペナルティ的な税を課すこと。これは環境税や炭素税という呼ばれ方をする。ヨーロッパではほとんどの国が導入しているが、日本では経済界や経済産業省が反対しており、実現していない。逆に再生可能エネルギーの方はエネルギー税を優遇するという方法もある。



 日本で行われてきたのが助成制度(補助金)である。これは設置者が払う設置価格の一部を補助する。単位出力あたりの補助額を定めることが多いので、よくkW(キロワット)補助といわれる。しかし、発電量は条件によって異なるのに、一律の補助なので実際の発電結果に必ずしも結びつかない。つまり、あまり発電しない設置場所や機器が結果的により優遇されることになる。また、設置価格は変動するので設置時期によって不公平が生じるということも起こる。そもそも補助額の決め方が不明確であるなどの批判がある。そこで、発電量に対して補助を行うkWh(キロワットアワー)補助であれば、こうした問題のいくつかを解決できる。これを補助ではなく、電力会社に義務づけるのが再生可能電力の固定料金による買取制度(フィードインタリフやフィックストレートなどと呼ぶ、以下フィードイン制度)。たとえば、太陽光発電からの電力を20年間50円/kWhで買い取るとすれば、設置者は十分に設置コストを回収することができる。いやむしろ、銀行に預けたり株を買うより確実で安全な投資になる。しかも補助金という名の税金は使わないですむのだ。

 これに対して、電力会社やユーザーに一定割合で再生可能電力を供給または使用することを義務づける、再生可能電力割当制度(リニューアブル・ポートフォリオ・スタンダード;RPS)という制度がある。日本は2003年にこのRPSを導入した。

 通常のRPS制度では再生可能電力を環境価値として証書化し、それを市場で売買することができる。つまり電力会社やユーザーは自分で発電したり直接買い取ったりしてもいいし、誰かが発電した分を証書として買い取ることも認められる。ところが日本のRPS制度は証書の売買を行う市場を持たず、導入目標も2010年でわずか1.35%ときわめて低いという、RPSとも言えない中途半端な制度である。

 それはとりあえずおいても、RPS制度を持つ国自体が世界ではきわめて少数になっていることが、日本ではほとんど知られていない(いや、RPS制度のことや日本にRPS制度があることを知っている人だってどれほどいることか)。世界の主流はフィードイン制度である。なぜなのか。それは両制度の結果を見れば明らかだ。ドイツを始め、フィードイン制度を導入した国々における再生可能電力の伸びは著しい。さらにこれらの国々では再生可能エネルギーが産業としても比重を高めている。それに比較すればイギリスを筆頭にRPSを導入した国々の成果は見劣りするものでしかない(他に主要国ではスウェーデン、ベルギー、オーストラリアがRPS制度を導入しているがいずれもフィードイン制度のようなめざましい成果は見られない)。

 日本ではわずかに太陽光発電のみが、再生可能エネルギー分野での成功例だが、それは設置資金への直接補助(kW補助)によるものだ。それも住宅用は05年度で打ちきりになり、06年度の導入はモジュール価格の上昇とも相まって、厳しい状況と伝えられている。モジュール価格の上昇と供給不足はシリコン原料の逼迫、ヨーロッパでの需要の高まりが原因である。日本メーカーは相変わらず世界シェアの半分近くを占めるが、今では3分の2がドイツを中心とした海外への輸出に回っている。日本で既存エネルギーを使ってつくられた太陽電池が、海外でクリーンな電気を発電しているのだ。しかも、その結果われわれは高い太陽電池を買わされる羽目になっている。フィードイン制度の国では、設置価格に見合ったkWh単価で買い取ってくれるのだから、値上がりは設置者の負担にならない。

 フィードイン制度はドイツ、スペイン、イタリア、オーストリアなどヨーロッパの主要国で成功し、原子力発電大国のフランスも導入した。ドイツ、スペインでは風力発電に続き太陽光発電が急速に伸びているのだ。中国やインドもフィードイン制度を導入している。

 再生可能エネルギー政策で、日本はいまやよく言えば唯我独尊、はっきり言えば仲間はずれの状況といっていい。日本でもっとも数が多いのは個人所有の「太陽光発電所」である。再生可能電力発電設備のオーナーである彼らすら、残念ながらこうした事実について知らないようだ。一部のNPOなどが太陽光発電による電力の自家消費分をグリーン電力証書化し、売買しようとしているが、何ともわかりにくい。

 時代遅れのRPSから、国際標準であり効果も実証されているフィードイン制度へ。20万以上もいる太陽光発電所オーナーが集まれば、その声はけっして小さくないと思うのだが。

本日のモーツァルト的気分:Serenade No.9 in D major KV.320 第2楽章

by greenerworld | 2006-09-25 09:02 | 環境エネルギー政策  

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