広がるニホンミツバチ養蜂の楽しみ
2007年 09月 03日
いちばん大きな巣箱を、開けて見せてもらった(写真上)。中が見えるようにアクリル板が取り付けてある。見事に大きくなった巣と、そこにびっしりと取り付いているたくさんのハチたちが見えた。数は数えようもないが、1万は下らないのでは、という。巣箱の下部の出入り口からはハチがひっきりなしに飛び立ち、また帰ってくる。羽を巣箱の中に向けて風を送り、巣の温度を下げようとしているハチもいる。
セイヨウミツバチは気性が荒く巣の手入れや採蜜の時に、面布や燻煙が必須。一方、ニホンミツバチはおとなしく、めったに刺さない。しかし、条件が悪くなったり巣が気に入らないと逃げ出してしまうという。
群れが健康だとハチもおとなしい、と河西さん。働きバチも、巣を痛める原因になる巣虫(ハチノスツヅリガの幼虫)をせっせと運び出す。群れに元気がなくなると、とたんに巣虫やアリの影響を受けやすくなり、そのまま巣が崩壊することもある。
河西さんの巣箱はアクリル板で中が見えるようになっているので、ハチや巣の状態が確認できて、対策が打ちやすい。巣の風通しをよくすることも工夫の一つ。湿気がこもるとアクリル板が曇るのでわかる。
仕事場や少し離れた場所にある畑、別荘を建築中の土地の庭にも蜂箱が置かれている。丸太を使った、より自然の樹洞に近いデザインのものもある(写真中)。これらも全て手づくりだ。
どうやってハチを集めるのか。近隣の自治体に「ハチの駆除」の依頼が入ると、河西さんに連絡が入る。庭木の樹洞、床下やお稲荷さんの祠など、さまざまな場所にハチが巣をつくる。多くのハチが出入りしていると、危険を感じてか殺虫剤をまいたり、出入り口の穴を泥で塗り固めたりして、駆除してしまう人が多い。自治体にはその相談が来る。初夏には分蜂群が「蜂球」を作って騒ぎになることもよくある。そうしたハチを引きとって、育てているのだという。野外で見られる巣や分蜂群はほとんどがニホンミツバチだ。
ニホンミツバチはセイヨウミツバチに比べ貯める蜜の量が少ない。先に書いたように逃亡してしまうこともままある。そのため明治以降、セイヨウミツバチが移入されると、ニホンミツバチの飼育は廃れた。しかもセイヨウミツバチに追われて、野生のものもしだいに数を減らしていった。しかし、最近セイヨウミツバチの養蜂業者・養蜂数が減少するとともに、ニホンミツバチが復活の兆しを見せている。
市販されている蜂蜜はまず100%セイヨウミツバチの集めたものだ。昨今は中国産を筆頭に輸入がほとんどだ。
「ニホンミツバチの蜜は高く売れるけれど、採蜜量も少ないしたくさん飼うのは骨が折れる。仕事でやるにはむずかしいですよ」と河西さん。趣味の養蜂が向いているというのだ。近くにも何人かハチ仲間がいる。あまり知られていないが、趣味のニホンミツバチ飼育は広がりを見せているらしい。何箱か飼っていれば一軒では食べきれないほど蜜がとれることもある。
取れたての和蜜をヨーグルトに掛けていただき、その恵みを味わった。
by greenerworld | 2007-09-03 15:41 | スローフード