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カテゴリ:レビュー( 26 )

 

[Book]『石油で読み解く「完敗の太平洋戦争」』

 12月8日は日米開戦の日。66年前(1941年)の今日、日本海軍がハワイ・オアフ島の真珠湾を攻撃した。すでに中国大陸で泥沼の戦争を繰り広げていた日本が、アメリカを始めとする連合国を相手にさらに戦線を拡大させた。

 工業生産力でも資源でも兵力でも数段勝るアメリカを敵に回し、なぜこんな無謀な戦争に日本は突き進んだのか。その理由はもちろん当時の軍部の独走にあるが、そのきっかけとなったのが石油だった。

 そのころアメリカは世界最大の石油生産国であり、輸出国だった。その当時日本には国内油田が存在していたが、その生産量はわずかで、アメリカの740分の1に過ぎなかった。日本の石油の海外依存度は92%、対米依存度は75%に達していた。航空機のエンジン出力向上に欠かせないオクタン価の高いガソリン精製能力でも、日本はアメリカに大きく劣っていた。

 1937年の日華事変を期に、アメリカは対日制裁を進める。工作機械、石油や高性能な航空機用ガソリンが輸出制限になり、さらに1941年7月には日本の在米資産の全面凍結、8月には石油の全面禁輸が実施された。

 さあ、困った。石油が入ってこない。石油は国民生活を支える以上に、戦争遂行になくてはならないものだからだ。戦車も航空機も軍艦も、石油なしでは鉄のかたまりである。石油禁輸で追い詰められた日本は、現在のインドネシアやマレーシアの油田を占領し、日本に還送することをめざした。

 開戦前に検討された不利な数字はことごとく無視され、あるいは棚上げされて、開戦しか打開の道はないと軍部は突き進んでいく。真珠湾の奇襲は成功したかに見えたものの、石油備蓄タンクもドックも破壊せずに引き揚げたため、米軍はすぐに体勢を立て直す。日本は真珠湾攻撃後ただちにボルネオやスマトラの油田や精油所を制圧するが、陸軍と海軍の対立でまごついているうちに油槽船が次々沈没され、補給線は断たれた。南方に派遣された石油技術者の多くも犠牲になり、掘削機械も失われた。燃料不足では、艦船も動けず戦闘機も飛べず、もはや戦いにならなかった。

 実は当時日本が支配していた満州(現在の中国東北部)には、膨大な石油資源が眠っていた。この油田が発見され、採掘に成功していれば、アメリカの政策も変わっていただろうし、その後の成り行きはだいぶ変わっていたかもしれない。しかし、かといって当時の日本の政治情況から、そのまま平和な世界が訪れたとは考えにくい。日本はさらなる軍事力拡大に突き進み、どこかで大きな破局が訪れたに違いない。

 『石油で読み解く「完敗の太平洋戦争」』
 岩間敏著 朝日新書 720円+税
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by greenerworld | 2007-12-08 17:25 | レビュー  

[Book]『水田生態工学入門』

f0030644_8165531.jpg 『水田生態工学入門』
 水谷正一編著
 農文協刊 2,900円(税込)

 第一章 水田水域の環境修復の課題
 第二章 水路と水田の生態系
 第三章 環境修復のハード技術
 第四章 環境修復のソフト技術
 第五章 事例に学ぶ環境保全工法

 水稲の生産効率を高めるために行われてきたいわゆる圃場整備事業は、一方で水田のまわりに暮らしていた多くの生物を激減させてしまった。かつての水田とその周辺に張り巡らされた用水路は、湿地を好む植物、魚、両生類、昆虫などに格好の生息環境を提供してきた。また、水田はふだんは陸上生活するカエルや河川本流に住むナマズやコイ、フナなどの産卵場所でもあった。それらを餌とするより高次の捕食者が集まり、豊かな水田生態系を形成していた。しかし、乾田化、水路の三面張りや暗渠化などによって、多くの生き物は水田周辺に暮らしていけなくなってしまったのだ。

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by greenerworld | 2007-06-28 08:32 | レビュー  

[DVD]誰が電気自動車を殺したのか? 

f0030644_10253169.jpg 「Who Killed The Electric Car?(誰がその電気自動車を殺したのか?)」。定冠詞がついているのは特定の車を指しているからで、GMのEV1のことだ。1996年に市場に投入されたバッテリー電気自動車EV1は、2シーターのスポーツカータイプ。キュートで、速く、静か、しかもクリーン。アメリカの交通輸送の未来を変えるかもしれないと思われた革新的な車であり、事実一部のカーユーザーに熱狂を持って迎えられた。しかし、GMは2004年末を持ってリースを終了することを決定。EV1は全てリースという契約方式であったため、ユーザーは回収を拒むことができなかった。回収されたEV1は次々とスクラップにされていく。元ユーザーたちは、EV1を救おうと立ち上がり、キャンペーンを始める。そして残されたEV1を守るために、24時間の監視態勢を続けるが、とうとう……。

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by greenerworld | 2006-12-11 10:27 | レビュー  

[Book]『ゴールデンスレッド』─太陽エネルギーに取り組んだ先達たち

f0030644_11321536.jpg ソーラーシステム研究所の蒲谷主幹から『ゴールデンスレッド ソーラーエネルギー2500年の歴史と実証』(K.ブティ+J.パーリン、技報堂出版)という本をいただいた。1985年に技報堂出版から翻訳が刊行されたもので、原著は1980年に出ている。新刊ではなくて旧刊であるが、アマゾン.コムで検索したらまだ絶版にはなっていないようだ。

 一口で言えば、人間がいかに太陽エネルギーとつきあい利用しようとしてきたか、その歴史をまとめた本だ。ゴールデンスレッド(金色の糸)とは太陽光線のことをいうのだろう。

 太陽(おひさま)の暖かさは、古代からもちろん認識されてきたに違いない。いってみれば日だまりや日なた水のぬくもりを、上手に生活に取り入れることは東西広く行われてきたことだ。しかし、産業革命以降はそうしたパッシブ(受動的)な利用にとどまらず、太陽エネルギーを直接利用する技術に取り組んできた人々がいる。

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by greenerworld | 2006-09-17 11:36 | レビュー  

[Book]『藻類30億年の自然史』─地球史を藻類を中心に扱った労作

f0030644_10173148.jpg 夏はベーシックな本を読みたいと思って、いつか読もうと買ったままにして置いた本を何冊か並行して読んでいる。その中の一冊『藻類30億年の自然史 藻類からみる生物進化』(井上勲著、東海大学出版会、2006)は、厚さと重さ(笑)、扱う時間スケール、参考文献の数等々、文字通り労作である。いや、もちろん内容も面白いし、専門書らしからぬ読みやすさでもある。

 地球はさまざまな生命の暮らす星である。その地球を生命の星たらしめた最大の立役者が、ちっぽけな、あるいは目立たぬ(中にはジャイアントケルプのような大いに目立つ海藻もあるが)藻類だった。

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by greenerworld | 2006-08-18 10:19 | レビュー  

[Book]'Beyond Oil'─石油生産は減少局面を迎えたのか?

f0030644_13562691.jpg ピークオイル仮説というのは、石油地質学者のM.K.ハバートが提唱した理論に基づいている。大まかに言うと、石油の生産量は、その埋蔵量の半分を掘り出したところで、ピークを迎え、後は次第に減少するというものだ。産出量を縦軸に、時間(年あるいは日)を横軸にしてグラフにプロットすると、ベル型の正規曲線を描くというのである。

 この考えに基づき、ハバートは1956年にアメリカの石油生産量のピークが1970年代初頭に訪れ、その後減少すると発表した。その当時、アメリカは世界一の石油生産国であり、多くの専門家や企業家はその考えを認めなかった。しかし、その後ハバートの予言通り、アメリカの石油生産量は1970年に最大となった後、二度とその生産量を超えることがなく、曲線をなぞるように減少を続けている。1969年、ハバートは同様に世界の石油生産についてもそのピークを予測した。それによれば、地球全体の石油埋蔵量が2.1兆バレルであるとした場合、2000年頃ピークを迎えるというものだ。これをハバート・ピーク(Hubbert's Peak)と呼ぶ。

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by greenerworld | 2006-08-16 13:59 | レビュー